専門用語について


時計や機械また素材や状態に関する用語について、ご説明をさせていただいています。

時計にまつわる用語

時計の機械内に使われている、石(主にルビー)その数を指します。
金属部品だけでは磨耗しやすいため、歯車などの軸受けとして摩擦係数が低く硬度の高い宝石が使われています。
ただし一般的に価値のある貴金属の「宝石」とは違い、人工物や非常に小さな石であることから、ジュエリーとしての価値はまったくありません。

使用されている石の数がわかる場合は、機械に「17 Jewels(17石)」のように刻印されています。
あくまで突き詰めて言えばということになりますが、石数が多ければ耐久性が高いとは言えますが、時代や時計によって技術や使われている石数も変わっていることや、古い時計については、長く使われることによって、石があることで軸が摩耗しやすくなるという面が無いわけではなく、そのまた反対に石が無いことで、地板(金属)部分が減るということもあり、ある程度の石数があれば、あまりご購入の参考にはされないほうが良いでしょう。

時計の文字盤に刻まれている、分や秒もしくは時間を表す目盛りや時間表示のことです。

時計文字盤部分を覆うガラス部分のことを指します。
アンティーク時計では、ガラス製かプラスチック製が一般的で、硬度の高いサファイアガラスは現代に近い時計から採用されています。

プラスチックでは傷が付きやすいものの、磨くことで細かな傷が取り易く、またアンティークのような時計では特異な形に合わせて加工のしやすい素材です。
また万が一割れてしまった場合にも、文字盤を傷めにくいというのも特徴です。

ガラスはある程度の強度はあるものの、傷が付いてしまうと通常の研磨では傷を取ることができないため、目に見える傷・触ってわかる傷が付いてしまうと交換することになります。
ある程度の強度があるため、プラスチックよりも断然傷が付きにくい素材です。
ただ、割れてしまうとガラス自体に厚みがあり、割れた面や破片が非常に鋭いため、文字盤に傷を付けてしまうことがあります。

腕時計のベルトの端に付いている金具で、ベルトを留めるための金具です。
新しい時計の場合はもちろんですが、古い時計の場合は、年代やメーカーによってはメーカーのマークが入っているものがあり、マークのあるオリジナルの尾錠は高価です。

ベルトを交換するときは、尾錠も一緒に取り付けてもらうようにお願いしてください。
最近はお店や店員の方が価値をご存じでないことも増えていて、元の尾錠を処分されたり返却されないこともあります。
金属の尾錠であれば、古くなってしまったものでも、再メッキをすれば新品のように綺麗になります。

時計の機械部分のことを指します。
裏蓋を外して見える部分、ケースの内側に収まっている機械自体のことです。
機械の種類ごとにムーブメント番号(機種番号)が刻印されていることがあり、またシリアル番号(機械ごとの固有の製造番号)が刻印されていることがあります。

アンティークでは、基本的には時計メーカーと製造メーカーはほぼ同じですが、1970年代以降から現代に近くなるにつれ特に、機械の自社製造が行うメーカーが減り、メーカーやブランドが違う時計であっても、機械は同じということが増えています。

アンティーク時計ではよく使われる言葉で、製造時に機械やケースに刻まれる刻印、製造番号のことです。
同じメーカーであれば、1つの製造番号に1つの機械だけであるため、メーカーによってはこの番号から製造年が特定できることがあります。
機械の製造番号になりますので、厳密には「機械の製造年=時計の製造年」ということではありませんが、おおむねその関係が成り立っています。
歴史のある時計メーカーでは、創業当初からの製造番号がずっと引き継がれています。

時計の顔ともいえる、ブランド名や数字が刻まれている部分を指します。
表面のガラスのある下にある、目盛りや針がある面のことです。
1920年頃までは白く艶のある陶製が多く、40年代以降は金属製が主流になっています。

腕時計ケースのベルトを留める部分のことです。
一般的な腕時計であれば、ケースの上下に4本の足のように伸びている部分のことです。

特に1920年代頃までの初期の腕時計に多い形で、ケース上下のワイヤー状になった箇所にベルトを回して留めるタイプの作りになっているものです。
一般的な、ケースから4本の足が伸びているような形のラグでは、現行品の時計と同じバネ棒タイプのベルトが取り付けられますが、ワイヤーラグは特殊な作りで、バネ棒を固定する部分が無いため、ベルトをワイヤーに巻き付けるような特別な形のベルトが必要になります。

腕時計なら通常は時計の右側に、懐中時計なら上もしくは右にあるネジのような突起部分です。
これを巻くことによってゼンマイを巻き上げ、引き上げて回すことによって時刻を合わせます。
古い時計の中には、若干操作方法が違うものがあります。

オーバーホールとは、機械式時計の定期健診のことを指します。
金属でできた車に車検があるように、同じく金属で構成される時計も、3年に一度程度の頻度で定期健診を時計店もしくは時計技術者のもとで受けていただく必要あります。
時計の機械の洗浄や掃除、各部分への注油、細かな調整などが行われます。

オーバーホールを受けないと、汚れやほこりの蓄積、錆びによる部品の破損、油切れによる磨耗などが起こり、誤差が大きくなったり止まりの原因となります。
メンテナンスを受けずに長期間使用し続けたると、誤差や止まるなどの症状が出た時には手遅れということもありますので、必ず定期的にオーバーホールを受けるように心がけてください。

アンティーク時計のオーバーホールは、現在に至るまでに長い年月を経ていることから、部品自体の摩耗やそれまでの修理やオーバーホールを手掛けた技術者によって問題やクセが出ていることもあります。
技術者側では、それらを理解した上で作業を行えることが大切で、やみくもに部品を削るなど、元に戻せない・不可逆的な修理を行うことは良くありません。

時計の姿勢(上向き・下向き・斜めなど)によって生じる誤差を指します。
古い時計には、この誤差を矯正する・姿勢によって影響を受けないための作りが備わっていないため、姿勢の違いによって誤差が生じやすくなっています。
寝かせていると誤差が少ない場合でも、立てて置いたり、横にしたり斜めにすると、誤差が広がったり止まったりすることがあります。

時計を文字盤を上にして寝かせた状態を言います。
特にオークションなどで時計が販売されている時に使われている言葉で、「平置きの状態で誤差30秒」などのように説明書きとして用いられることがあります。
ただ時計の実質的な誤差と平置きの誤差には大きな違いがあり、平置きという言葉では正しい誤差や時計の状態を示しているとは言えません。

理由は、平置きの状態では、各部品が立った状態、重力などの影響を最も受けにくい状態で、この状態で正しく動いていたとしても、斜めにしたり裏返したり、横にしたりと姿勢を変えると、部品の動作にぶれが出たり、部品同士が触れることが原因で、誤差が広がったり止まったりすることがよくあります。
古い時計の場合は特に、姿勢差によって時計の振りの出方なども違い、誤差も姿勢によって違うことが当たり前です。
そのため、平置きという計測だけでは、正しい誤差や「正常に動いている」という証明にはなりません。

1日24時間に生じる時計の誤差のことで、時計の精度を示すために、「日差3分以内」(1日の誤差3分以内)などのように使われることがあります。

手でリューズを巻かなくても、腕時計を腕に着けて手を振る・時計が揺り動かされることによって得る動力によってゼンマイを巻き上げる機能のことを指します。
手巻き時計と比べて、手で1日に1回といった具合に巻き上げる必要がなく、腕に着けているだけでずっと動いてくれる点で非常に便利です。
そのメリットの反面、振動が与えられないとぜんまいが巻き上げられないため、巻き上げた動力がなくなると止まってしまいます。
ぜんまいが一杯まで巻き上げられている状態で、通常は丸1日以上は動きますので、毎日使われるなら問題ありませんが、時々使う程度であれば、次に使う時には止まってしまっているため、その都度手で巻き上げて、時間を合わせてあげなければいけなくなります。

手巻き・マニュアルは、手でリューズを回してぜんまいを巻き上げる時計のタイプです。
1960年頃までは最も一般的なタイプで、その年代頃までは懐中時計や腕時計ともにほとんどがこちらです。
ぜんまいを一杯まで巻いた状態で、時計にもよりますがほぼ1日24時間動きます。
毎日ぜんまいを巻いていただく必要がありますが、アンティーク時計ではこの手巻きという操作に人気があります。

通常はリューズを巻くことでゼンマイを巻き上げますが、古い懐中時計や置時計・柱時計の中には、鍵状の部品を差し込んでゼンマイを巻き上げる方式のものがあります。
このタイプの時計を鍵巻き式と呼び、鍵状の部品を鍵巻きと呼びます。
時計側に巻き上げるための四角い芯棒があり、鍵にある四角い穴を芯棒に差し込み回します。
鍵は必ずサイズの合ったものが必要で、巻く際に滑ってしまうようなサイズの合わないものを使い続けると、芯の角が無くなり巻けなくなってしまう原因になります。
懐中時計では1900年頃もしくはその以前の古いタイプに見られるものです。

一般的な時計は、リューズを引き出してから回して時刻を合わせますが、特に1900年前後のアンティーク懐中時計の中には、文字盤・風防枠のフチあたりにある小さな突起・レバーのようなものを引っ張ってから、リューズを回して時刻を合わせるものがあります。
このタイプの時刻の合わせ方を行うものを、剣引き式・レバー式と呼びます。
剣引きのレバーを引き出して、引き出している間にリューズを回すと短針長針が動き、時刻を合あわせることができます。

レバーの引き出しはしっかりと最後まで引き出してから時刻を合わせる、終わったら押し込みも同様にしっかりと最後まで戻すことを心がけてください。
中途半端な状態でリューズを操作すると、部品を傷めてしまうことがあります。

通常はリューズを操作して時刻を合わせますが、特に1900年前後のアンティーク懐中時計には、小さなボタンのようなものを押しながらリューズを操作するものがあります。
このタイプの時刻の合わせ方を行うものを、ダボ押し式・ボタン式と呼びます。
オープンフェイスの懐中時計に見られるもので、時計の右肩や左肩部分に小さな押し込めるボタンが付いています。
ボタンを爪先などで押し込んでいる状態でリューズを回すと、短針長針が動き、時刻を合わせることができます。

ボタンの押し込みはしっかりと深く押し込んだ状態を保持して、リューズを回して時刻を合わせてください。
押し込みが浅いと、部品を傷めてしまうことがあります。

懐中時計のケースの種類の1つで、時計の表面・時刻や文字盤が常時見えている形のものです。
時計を手に取って、すぐに時間が見えるので便利なもので、懐中時計の最も定番の形です。

懐中時計のケースの種類の1つで、時計の表と裏の両側が、蓋で覆われたものを指します。
狩猟に持っていくのに、ガラス面がむき出しだと割れてしまうことがあったため、ガラス部分を保護するために表蓋が付いたものが考えられました。
そのため別名をハンティングケースとも言います。
表蓋はリューズを押すことで開き、裏側の蓋は時計によっても違いますが、開けるために簡単な工具が必要なものもあります。

懐中時計ケースの種類の1つで、形としてはハンターケースと同じく表蓋と裏蓋のある形です。
ハンターケースとの大きな違いは、表蓋自体に時間や分表示が施されていて、さらに中央に小さな小窓が設けられているため、その小窓部分から少しだけ常時短針と長針が見え、表蓋が閉まった状態でも時間が確認できるようになっています。
完全なハンターケースではないという意味で、ハーフ(半分)ハンターと呼ばれることもあります。

有力な宝石商や企業、また財力や権力のある方が発注した特注品・カスタムメイドの時計で、機械自体には実際の時計製造メーカー名の刻印があり、文字盤に制作を依頼した企業名・店名が入っていることが一般的です。
特に有力な宝石商が作らせたものが有名で、お店のオリジナル時計として、有名時計メーカーに作らせたものが多数現存しています。

素材にまつわる用語

ケースの素材のことで、アンティーク時計に良く見られる素材です。
地板を薄い金の板で挟みこんで作られたもので、メッキとは違って金に非常に厚みがあるのが特徴です。
時代やメーカー・ケースそれぞれによっても違いますが、メッキは非常に薄く、時計に穴を空けた時にも、その形が確認できないのに比べて、金張りは非常に薄い板状の金が、剥がすことのできる形として存在します。
GOlD FILLEDと刻印されているのが一般的ですが、メーカーや時代によってはGOLD PLATEDなど、金メッキと混同されるような刻印があるものもあります。

金張りが厚みのある金の板で挟まれたものというイメージだとすると、金メッキは金を下地の金属に塗っただけといったイメージです。
わかりやすく食べ物で例えるなら、金張りはサンドイッチ(パンの部分が金・具の部分が芯になる金属)、金メッキはジャムを塗ったトースト(パンの部分が芯になる金属・表面に塗ったジャムが金)といった感じです。

比較的しっかりとした金の厚みもあり、地板も強く強度があるため、お勧めできる素材の1つです。
金無垢は昔も高価であったため、作られた数が少ない・選択肢が少ない反面、金張りは時計ケースの素材としては金メッキが主流になるまで最も良く使用された素材であるため、相対的に数が多く、デザインとしても非常に豊富で良いデザインが多く、時計を選んでいただく時の選択肢が多いのが特徴です。

ベースになる素材に良く使われる言葉で、金や銀でできているものを指します。
金無垢=純金だと思われる方が多いのですが、純度が100%の金では金属としては柔らかすぎて、時計のケースとしては実用的ではありません。
強度を上げる目的で、その他の金属の含有度合いを変え、その割合によって9金・14金などが主に使われています。
銀も金と同様ですが、銀は含有度合いや鋳造された国によって、Solid Silver・Sterling・Coinなど純度によって呼び名が違います。

下地の金属に、電気的に金をうっすらと接着したものが金メッキです。
メッキ部分に傷が入ると下地の金属が見えることがあり、金という素材としては非常に薄いものです。
金の皮膜のようなイメージで、厚みはミクロン単位です。

耐久性としては弱いものですが、補修が容易で修理の際の自由度の高いもので、剥げてしまった時の再メッキ、イエローゴールドからローズゴールドにメッキを変更するなど、比較的簡易に補修とカスタマイズができることが魅力です。
金無垢や金張りを好まれるお客様も多いのですが、補修性の高さから、きれいに直すことができる素材として、お勧めできる素材でもあります。

白色・銀色の金のことです。
金にニッケルやマンガンなどの白色金属を混ぜて銀色にしたもので、高級金属のプラチナとは別物です。
アンティークを販売しているお店の中には、ホワイトゴールドをプラチナと解説しているお店もありますが、ホワイトゴールドとプラチナは別物です。

腐食に強いため、現在の時計はほとんどがステンレスが使用されたケースです。
アンティーク時計では時代的に金・銀が好まれたため、あまり一般的ではない素材です。
非常に固い金属であるため、貴金属加工の工具が破損してしまうほどで、ステンレス素材の加工や修理はなかなか請け負ってもらえるところがありません。

アンティーク時計に良く見られる時計の針で、青紫・深い青色をした針の素材のことです。
手作業で金属に焼きを入れる・一定の温度でしか変色させることができないため、現在では高級な機械式時計に使用されています。
1930年頃までの時計の針には非常に良く見られる素材で、アンティーク時計の特徴の1つと言われるほどですが、それ以降になるとほとんど見かけることがなくなります。

 

状態にまつわる用語

使われていたアンティークには、使われたことによる傷や汚れ・変色などがあります。
長い年月を経て使われることによって発生する変化、素材特有の変化や派生的に発生する変化のことを経年変化といいます。
時計や雑貨にアンティーク特有の個性や色合いを与えるため、アンティークとしては歓迎するべき味として考えられています。

いろいろな状態がありますので一概には説明できませんが、例を出して説明をさせていただくと、例えば金属の時計の文字盤などで、経年による変色や退色・劣化などがそれに当たり、ケースでも同様に磨耗や変色などが起こります。
また木製品であれば、木の表面が光沢を帯びる・木自体が痩せる・独特の形を見せるなどもそれに当たります。

作られてから現在までの長い年月を経て起こった変化で、これからも起こり続ける可能性がある変化ではありますが、確実に同じ変化が起こるとはいえません。
長い期間での保管状況や使用状況もありますので、例えば今お持ちの時計の変色が50年間の間に起こったものだとして、同様の変色が現在使われている状況で起こる・進行するというものではありません。
100年間や50年間のという長い期間で起こったことであれば、今後それ以上の変化が起こるには同様の期間が必要であると推測されますが、それまでの保管状況・使用状況よりも良い状態で使用されていれば、その変化が起こらない・変化が遅くなることは十分に考えられます。

アンティークの陶器、時計では陶製の文字盤に見られる、うっすらとした線のようなひび割れ状態のことです。
状態は様々で、表面や釉薬部分にごくわずかに見えるか見えないか程度のものから、はっきりと目視できる状態のものまであります。
作られた時に入っていたであろうと思われるものや、長い年月の間に入ってしまうものもあり、素材が陶器の茶碗や湯のみと同じ陶器であるため、長い年月の使用でヘアラインが入ることはごく一般的なことです。

特に時計の金張りケースに多く見られる現象で、ケースの裏蓋の角に割れやヒビのように見える溝(傷)が入ることがあります。
金張りでは、長い年月の使用による金部分の摩耗が起こり、摩耗した箇所が腐食し広がるもので、大切に使用されていたことの証だとも言えます。
程度の軽いものであれば、目視できる部分だけの腐食であることもありますが、状態が悪くなると、金張りの内側の金属に広範囲に渡って腐食しているものもあります。

 
 
 
 

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