古い時計の現在の価値を知る


アンティーク時計の価値は今どのくらい? 金額を知るにはこんな方法があります。

この時計、どのくらいの価値があるのだろう?

時計だけに限らず、年代物のアンティークであれば、誰もが1度ならず何度でも、きっと考えたことがあることではないでしょうか。
査定金額が高かったら売ってしまおう、そして安かったらがっかり。
実は「貨幣価値に沿う」現実的でもあり、かつ夢も膨らませることもできる、現在の価値の考え方と計算方法があります。

懐中時計
 

このような方はお読みいただく必要はありません

【 真のコレクターや本当の時計好きの方 】

好きな時計そのものに価値があるのであって、貨幣的な価値を考えるということはあまりありません。
その品が唯一のものであり、自分の好みに合う、人生の相棒だから。
今の値段を知ったところで、手放すことを考えることはないので、価値を知りたいと考えることもないのではないかと思います。
また同様に、大切な形見の品や、家に伝わる大事な品であれば、売ろうとも考えないものでしょう。
 

【 時計を処分したいと考えている方 】

時計の価値についてよくご相談をいただくのは、タンスに仕舞われていた時計や、その方の趣味ではない時計を受け継がれた時などが多いようです。
今の価値を尋ねられて、手放されるかどうかの基準として、その時計を処分されたいということでご相談をいただくことがあります。
ご紹介する方法は、処分する際に「売れる」金額ではありません。

品物の査定

 
 

考え方によって違う価値が生まれる

では実際に、どのくらいの価値があるものなのか。
価値の意味には、2つの意味があります。
1つは、「処分する・いくらで売れるのか」という価値。
そしてもう1つは、そのものが本質的に持つ価値、そして持つべき価値です。

 

いろいろな価値の考え方

価値を考える上で、その計算のもととなる基準というのは、本当にたくさんあります。
例えば、ひとえに貨幣的な価値として考えるとしても

-処分するための買い取ってもらえる価格
-その値段で買う人がいると考えられる価格
-お店で売られるとしたらこのくらいという金額
-テレビに出演するような鑑定士が鑑定した価格

天秤と古い本

ざっとおおまかに考えただけでも、1つの商品にはそれぞれで違った価格が付けられることがお分かりいただけるのではないでしょうか。
それぞれの方法を考えるだけでも、大きな違いがあり、結果にも大きな違いが表れることになります。

例えば、処分するにしても、それこそオークションで売ってしまうのか、委託販売に出すのか、貴金属が含まれる場合なら「地金」だけの価値で引き取られるのか、質入れされる金額になるのか。
ただ単に「処分する方法」だけをとっても、その処分の方法で、金額は変わってくるということになります。

 

買い手とお店の販売金額で考える

その値段で買う人が居る・お店で売られている金額で考えると、それも千差万別。
その時計に10万円の価値を見てもらえる方もいれば、100万円払っても惜しくないと考えられる方もいらっしゃるわけです。

お店で売られている金額を基準と考えても同様で、時計の状態が違えばその価値自体も違い、修理ができない問題を抱えていれば、時計としての価値自体が無くなります。
販売をするお店の格の違いや、そのお店では修理や販売ができない場合は、幾ばくも無い金額でしか買い取ってもらえないこともあります。

時計に含まれている貴金属としての価値だけで判断されるとなると、それこそ時計に含まれる金の部分だけ。
溶かして得られる貴金属だけの価値になってしまうことがほとんどで、二束三文といった金額になってしまいます。

金の粒

 

鑑定という形での金額を考える

それなら、テレビで鑑定されている金額が正しいのかと言えば、昨今テレビ番組の鑑定が問題になることがあるように、一人の知識と判断には限界があります。
当店にもテレビ番組から鑑定の依頼がありますが、何を基準に鑑定されているのかというのは明確になっていません。

そこにはテレビ的な面白さ、という要素が多くを占めているといって過言ではないでしょう。
一つの判断材料にしかならないもので、「これが絶対に正しい」という鑑定基準は存在しません。

 

 

時計の価値の求め方

それなら、「ぶれない」時計の価値の求め方は何なのか?
実は、まったくぶれない、理想的かつ現実的であり、時計を持つ方の夢をも膨らませる、価値を考える方法があります。
処分して売ってしまうという場合には、その判断基準にはならないのですが、より現実的な金額を考えることができる方法です。

その方法とは、時計が販売されていた時代の金額を、現代の貨幣価値に置き換えてみるという計算の仕方です。
時計が作られていた当時に売られていた金額が、現代ならいくらぐらいだったのかと、当時の所得から考えていきます。

古い計算機

価値を求める基準の例

では、実際に計算していきます。
どの時代を例にとるのかで、金額は変わってくるのですが、懐中時計時代の終わり、1920年代を例にとっていきます。
この頃は、時計自体の生産数がそれまでと比べると飛躍的に上がり、より一般に広く使われるようになったと考えることのできる時代です。
雑誌などの出版物も活発になる時代で、時計の広告も、それまでと比べると、非常に数が増えていく時代になります。

この時代に信頼があり高級メーカーの一つとして、当時非常に知名度のあった、高級な部類に入るロンジンの腕時計を例にとってみます。
そして価値を求めるのは、資料の多いアメリカを基準にして考えていきます。
金無垢と呼ばれる、ケースが「金」素材のものは、物価の上昇とは比べ物にならないほど、金自体の価値が高騰していますので、金額の参考には用いません。

 

当時の金額と貨幣価値を換算する

1920年代、素材は金張りで当時60ドルのロンジンの腕時計から、その価値を考えていきます。

1920年代のアメリカの平均的な家庭の所得は、1年間で1400ドル。
60ドルの腕時計が、所得に占める割合は約4.3%。

2015年の平均所得は67000ドル、日本円に直すと、この年は1ドル120円というレートですので、日本円では約800万円。
800万円の4.3%は約35万円。
当時の所得に占める時計の金額の割合を、現代の所得に当てはめると、このくらいの金額になります。

そこそこ良い時計とイメージした時に、その金額を考えると、現代でもだいたいこのくらいではないかなという金額ではないでしょうか。
もちろん所得金額によっても違いますが、現在販売されている少し高級な時計の金額を考えると、当たらずとも遠からず・妥当な金額だと思います。

言い換えると、もし1920年代当時、1年間の所得が800万円であったなら、ロンジンの時計は35万円で売られていたであろうと考えることができるというわけです。
もし1920年から現在まで、人々の所得や物価が変わらなければ、当時のロンジンは今でも35万円だと考えることができます。

1920年頃の風景

換算された価値に付加されるもの

でもその時計は、1920年代からすでに100年ほど経っています。
アンティークとしての価値をそこに加えるとすれば、その時計にはいくらくらいの価値があるべきでしょうか?
「アンティーク」という肩書を持ち、そして希少品となれば、その価値は必然的に上がっていると考えるべきでしょう。

当時の時計は、だれでも身に着けられるというものではなく、車などと同じ、持つことがステータスという高級品。
現代のように、安く気軽にどこでも買えるものではなく、特別で高価な贈り物でした。
100年前に35万円であったもの。
現在のその時計に、あなたならどんな金額をお付けになりますか?

 
 

上がり続ける価値の裏側には

当時の所得に占める時計の金額の割合を、現代の所得に置き換えて考えてみる。
とても現実的であり、かつ理想的な金額をはじき出してくれる方法でもあり、夢を持たせてくれる考え方ではないでしょうか?

数十年前のブリキのおもちゃや、昭和年代のゲーム機にも価値が付くのは、皆さまもよくご存じの通り。
こう考えると、アンティーク時計は、「本当の価値より安く評価されている」と思われませんか?

アンティーク時計の値段は、年々その金額が上がってきています。
それこそ20年・30年も前に大きな投資をしていれば、大きな見返りとなっていただろうという記事が、業界のニュースとして取り上げられたりもしています。
でもこう考えてみると、値段が上がっていくのも妥当だなと感じられるはずです。

 
 

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