風防の丸い影のような跡は何?
ガラスと同じで透明で良く見ないとわからないものですが、小さな丸い跡があることがあります。
ガラス風防の中央辺りに影のようなものが見えるのは?
時計のガラス風防に、何か1センチほどの丸い影のようなものが見える。
影とはいえないまでも、中央に角度によって見えるか見えないかという程度、ガラスと同じく透明ではあるものの、そこだけわずかに何か違っているように感じられることがあります。
このページの上部の写真のように、よく目を凝らしてみると、このように見えることがあります。
この写真では、どのような状態かお伝えしやすいように、わかりやすい状態の風防を用意し写真を撮っていますが、実際はかなり気を付けてみなければわからない程度のもの。
どの時計にもあるものではなくて、古い時計の中に、時々みることができるという程度のものです。
ではこの直径1センチほどの影の正体は何なのか?
それは実は、そのガラスが作られた当時に貼られていた、型番やサイズを示すシールの跡なのです。
アンティーク時計が作られていたその当時は、時計の機械はもちろんのこと、時計のケースの進化も日進月歩。
さまざまなサイズの時計、そして様々な形をした風防が必要な時代でしたので、風防には必ずサイズを示すシールが貼ってありました。
そのシールの名残りが、影のような跡となって残っていることがあります。
なぜガラスにシールが貼ってあるの?
古いものを例えに出して、懐中時計用のガラス風防から考えていきましょう。
懐中時計のサイズがたくさんあるように、風防のサイズも非常に幅広く、直径だけを考えて、5センチ程度までの基本サイズだけでも、なんと300種類以上というサイズの違いがありました。
さらにそこにオープンフェイス用の厚いガラスがあり、そしてハンターケース用の薄いガラスがありますので、厚みの違いが加わります。
しかも時計によって、針の高さが違い、ガラスの内側の高さが低いと針が当たってしまうため、風防の高さにもそれぞれ違いがありました。
300以上という基本的な数に、少なく数えても、高さの違いで数種類、さらに厚みの違いも数種類という掛け算になりますので、どのくらいたくさんの種類があったのか、容易にご想像していただけると思います。
ただ単に丸い風防といっても、それだけの種類があったのです。
【 風防の高さの違いだけでもかなりの種類があります 】
さらに時代が進んで腕時計の時代になると、今度はケース自体・文字盤自体の形も多種多様に変化し、丸型はもちろん、正方形・長方形・樽型・平面・カーブ・一方向だけへのカーブ等、それこそ数えることができないくらいに多様化していきます。
年代が進むほどにガラスの種類や数は増え続け、メーカーによってまったく違う風防が増えていきましたので、型番やサイズがわからなければ管理ができるものではありません。
風防を販売ましてや在庫として管理する、修理のために発注したり保管するためには、風防自体にそのサイズが明記されていない限りは不可能。
当時はもちろん現代から考えても、最も合理的でわかりやすい、個々にシールを貼るという方法が取られたわけです。
シールの跡なら取れるのでは?
この風防に貼られているシールは、かなり簡単に取れるもので、ぬるめのお湯に浸けてあげると、作られてから100年ほど経っているものであっても、いとも簡単に外れてくれます。
糊付けされたシールで、そんなに簡単に取れるものなら、風防に残った跡も、簡単に取ることができるのでは?
そう思われた方も多いのではないでしょうか。
でも実際のところはそうではなく、その跡の部分は、「剥がせない」のです。
そのシールが貼られてから数十年、長いものであれば100年ほど経っていることになりますが、それだけ長い期間を経ると、接着部分がガラスと同化してしまうものがあります。
風防と接着剤という別々のものではなく、ガラスに接着剤が染み込んで同化している状態という言葉がもっとも状況を説明するのに正しい言葉です。
そのため、その影の部分をいくら擦っても取れるものではなく、その影は一向になくなりません。
これを取ろうとすれば、風防の表面を削り取ってしまわなければ取れない状態になっています。
アンティーク時計の場合、このようにガラス面に影のあることがありますが、それは昔のガラスを使用していることによるもので、時計に合わせた正しい選択がされているという証。
アンティークの味として見ていただくもの、ということになります。
プラスチックの風防に見られないのはなぜ?
プラスチック風防は、傷が付きやすいという性質があります。
軽く擦れただけでも擦り傷が付き、風防同士が当たることでも、傷が付いてしまう可能性があり、接着剤や薬品等での表面的な変化も受けやすい素材です。
そのため、ガラス風防とは違い、小さな袋などのパッケージに入れられて流通していました。
小さなパッケージに入れられていることで、パッケージにサイズや型番などが表示されていたため、風防自体にシールが貼られることは無く、プラスチック風防に同様の影が見られることはほとんどありません。
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