パイロット・ドライバーズ用の特殊な作り
その時計が過ごした歳月の長さが、稀で貴重なる貫禄を醸し出す。
ただ「古いだけ」の時計ではなく、それが「楽しめる古さ」であり、見せたくなるような「愛されるべき味」になる時、時計にはまた新たな境地が開かれます。
そのような域に達することができるのは、その時計の作り、そして素材、またデザイン、どのように年を重ねたのか、それらの全ての要素が絶妙な組み合わせになった時にだけ。
数あるアンティーク時計の中でも、ただ単にその時計の由来に依存しない、ただただ時に任せるようにして生まれるものであり、まさに同じものが一つとない貴重なものだといえるでしょう。
このウォルサムの腕時計も、愛でるべき姿を持った貫禄の腕時計。
時計の姿形からしても、とても味のあるもので、それだけでも十分に味わいのある時計です。
それがこの時計の「らしさ」に磨きが掛けられたように、歳月によって熟成されたもので、時計そのものの魅力、時計のデザインを何倍にも引き立てて見せてくれています。
当時わずかな期間に見られたものですが、ドライバーズウォッチ・パイロット用の時計として、運転をしている時にも時間が見やすいように、12時が右側になっているのが大きな特徴。
またワイヤーラグという、この年代・初期の腕時計に見られる作りを持っているのも大きな特徴で、文字盤の配色や作りなどについても、戦時にミリタリー用途に使い始められたもので、刻印がありませんので軍用であったと断言はできませんが、時計の出自を物語っているようです。
このような時計の作りや時代背景から、このような年季の入り方をしたのは、まさに天からの贈り物のようだと言っても過言ではありません。
この時計に出会った時に、「これは」という感動を与えてくれたもので、入荷してからできるだけ手をかけずに商品としてお出ししています。
確実なことは証拠がありませんので言えませんが、時計のワイヤーラグ部分(ベルトを留める箇所)の摩耗がまったくと言って良いほど見られないこと、また時計のバンドの古さから、おそらくは時計と同じ年代頃のものと思われるものながら、まったく使用感が無いというところ。
そして文字盤にも手を掛けられた様子が全くと言って良いほど見られず、写真でもほとんどおわかりいただけないほどですが、7時58分を指す辺りの文字盤に針の跡だと思える変色がわずかにあり、その時間でずっと止まった状態で保管されていたことが想定されるものです。
バンド自体も非常に味のある作りであり、さすがに年代的な素材自体の経年劣化は見られますが、それでもこれほど状態の良いものにはまず出会うことがないもので、このバンド自体にも価値があるものです。
どなたにでもお勧めできる時計ではありませんが、骨董・アンティークの一つの楽しみ方の頂点であり、その風情を楽しむという点においては、このような時計に出会うことはなかなかあるものではありません。
店主のワンポイントと評価
総合評価
アンティークは出会いものと言いますが、このような時計となると、本当に1点ものであって、同じものがまったくないという自然の産物に近いものです。
できるだけ手をかけずにお出ししていますので、写真では経年劣化が見られる部分やケースの一部には錆びすらもご覧いただける状態です。
ただこの雰囲気こそに味があるものであって、これを味と言わずに何と言うのかという、この時計の個性です。
ご希望であれば磨きもベルトの交換もいたしますが、この時計のこのままの現状を楽しんで頂ける方にのみお勧めしたいものです。
見た目にも古い、汚い・破損している、といったマイナス面のある古い時計は数多くあります。
そのようなアンティーク時計でも、古さはもちろん楽しんでいただけるものですが、人前に出して「見せたくなる」かと言えばそれは別物であるはずです。
この時計のように腕元を見せてみたくなる、そんな楽しみ方をしていただけるものは本当に無いものです。
状態
ケースにわずかに錆びや経年劣化が出ている部分もありますが、時計そのものの動作に問題のある部分ではなく、アンティークの味としていただくべき部分です。
希少性
同じものをと言われても、歳月によって作り上げられた面が大きいため、まず入荷することができないものです。
贈り物
贈り物としては、この古さに価値を感じていただける方のみにお勧めします。
それをお分かりいただける方に贈られるのであれば、本当に素晴らしい1点になります。
備考
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