昭和という個性立つ懐中時計
高級時計メーカーの老舗として、時計メーカーの中でも、非常に古い歴史を誇るユリスナルダン。
古くは船舶用の時計として大きなシェアを占めたブランドということで、現在では船の「錨」がトレードマークになっています。
またスイスはロックルという時計産業の街で操業した、スイスを代表するブランドのひとつ。
現在でも、特殊なフォルムの時計を作り出すことで人気のあるブランドで、アンティークでは数が比較的少ないことから、現在の新しい時計から好きになられることが多いメーカーでもあります。
この時計は、そんなユリスナルダンの1939年頃の懐中時計。
時代としては、すでに腕時計の時代に大きく舵が切られ、腕時計の全盛期が始まろうという頃のもので、いわゆるアンティーク年代という懐中時計とは一線を画した作り、この時代ならではの作りの面白さのある1点です。
特に文字盤のデザインは、30年代頃の金属製の文字盤ならではのデザインで、古くなると陶製になり、新しくなるとより新しく見えるデザインに変わりますが、この中間世代というのは、何とも言えない、この時代ならではの愛嬌のある作りが特徴。
移り変わる時代のはざまで、製造方法やデザインの方向性などがあって、こういった作りになったのだろうと、感慨深く見ていただけるものだと思います。
それまでの懐中時計と機械の厚み自体がまったく違い、技術の革新もそこにしっかりと織り込まれていて、厚みや重さという点で、時計としての携帯性が格段に良くなっているのが持つだけでわかります。
程よく昔の作りを踏襲しながらも、新しさを織り込む。
それが昭和年代を通しての面白さであり、継承・創造・試行、作ることへの挑戦で、非常に個性的な時計が生まれた時代。
現代では「昭和レトロ」という言葉で表現されますが、この時計の趣きは、まさにその雰囲気にぴったりと合います。
またアンティークならではのもので、時計の内側に1939年10月5日に贈られたことが彫られているのも、年代がわかる確かな証拠。
時は1939年9月から始まる第二次世界大戦の勃発直後。
混沌としたヨーロッパと、その中で作られていく時計たち。
そんな時代背景を考えると、時計にさらに思い入れを感じていただけるものでしょう。
店主のワンポイントと評価
総合評価
いかにもアンティークという懐中時計の良さもありますが、このようにレトロな雰囲気を持つ懐中時計は、その個性が際立つため、そこに深くそして長く惹かれるというのが特徴でもあります。
シンプルかつ程よいアンティーク感を持つユリスナルダンの懐中時計。
ナルダンの腕時計をお持ちの方なら、その魅力に惹かれる時計でしょう。
ナルダンの腕時計よりも、ナルダンの懐中時計と出かけてみることの特別な楽しみを感じていただけるものです。
状態
特記事項はありません。
希少性
年代的にもメーカーとしても数の少ないものであり、同じものはまず入荷しません。
贈り物
レトロな作風ということで、一般的な「古い」懐中時計とは少し感じ方が違います。
デザイン的にとても味のあるもので、カジュアルにもプライベートにも、現代のスタイルからは、非常に合わせていただきやすいものではあります。
飾っていただくというのも楽しみ方の一つではありますが、この時計に関しては、できればしっかりと使い込んでいただきたいもの。
昔の古い世代の懐中時計と比べると、直径でのサイズも程よく、厚みも時代的なことでかなり薄くなっていますので、非常に持ち運びのしやすいもので、普段使い用に向きます。
贈り物としても非常にお勧めできる1点ですが、この点を考慮してプレゼントしていただくのが良いでしょう。
備考
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