2色の毛を編んだ紐という特別品
髪の毛や獣毛が商品の素材として使われたり、美術品を彩る素材になっている時代がありました。
現代からみると、製作にかかる手間などを考えると一般的ではありませんが、アンティークと呼ばれる時代には、その繊細で自然な色合いや質感から、毛ならではの品が作られていました。
この懐中時計の紐は、そんな時代に作られたアンティークならではの1点。
特徴的なのは、栗色と黒という2色の毛が使われているところ。
2色を編み込んで1本の紐になっているものがありますが、このように2色の毛を使い、それぞれ色の違う別々の部品を製作し、チェーンの金属の輪を繋ぐのと同じようなスタイルで、1本の紐になっているものは珍しいものです。
輪を繋ぐというチェーンのような見た目でありながら、毛という素材であるため、色味としても柔らかく、重さとしてもとても軽く使い勝手のよいもの。
懐中時計を提げるための紐や布タイプのものはありますが、それとは一線を画す装飾性の高さであり、金属製のチェーンと紐の長所を併せ持つ1点と言えるでしょう。
繊細な編みに驚く
何も言われずに、ぱっと見ただけであれば、これが手で編まれたものとお分かりになられる方はいないでしょう。
一見しただけでも、まじまじと眺めても、ただの2色の紐としか見えません。
しっかりと近くで目を凝らして見て、細く束ねられ編まれていることに、やっと気づくほどです。
そして気付いた後に、改めて見直して頂くと、それがどれほど精巧に作られたものかお分かりいただけるものでしょう。
なるほど、これは芸術品・美術品の域だと改めて思っていただけるものだと思います。
店主のワンポイントと評価
総合評価
毛という自然な素材ならではの、落ち着いた色味が特徴の1点。
実際に見た感覚では、黒はそのまま黒色ですが、もう1色は光の加減でブロンド色・オリーブ色にも見えます。
組み紐だと少し明るすぎる・色味として単調、チェーンだと金属の色味が明らかですので、それらとは違った深い色味や質感、特別さを求められる方にお勧めしたい1点です。
金属のキラキラとした輝きや光沢が合わない場や、落ち着いた色味で身に着けたい時に特にお勧めです。
この手の紐には、髪の毛が使われているものが多いのですが、この紐に使われている毛自体は太めで、ごわごわとした肌触りですので髪の毛ではありません。
何の毛かは特定できませんが、馬などの獣毛ではないかと思います。
状態
細い毛を束ねて作られていますので、使用と経年によって、ほつれのある部分や少し弱くなっている箇所が見られます。
保管されていただけではなく、実用として使われていたことがそこからもわかります。
強い素材ですのですぐに切れてしまうものではありませんが、輪同士が擦れる部分などに劣化がみられますが、素材のことを考えると、それでも非常に状態が良いものと言えます。
希少性
毛で作られた紐自体が少ないなかで、このような形で作られているものは特に珍しくなっています。
贈り物
素材や色合いから、どなたにでもお勧めできるものではありませんが、これだけの品を編む難しさを考えると、その価値は金属のチェーンよりもはるかに高いものだと言えるでしょう。
備考
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