渋さが光る個性の懐中時計
人の顔にも濃い・薄いという言葉が使われるように、時計にもそんな表現が良く似合うものがあります。
この時計は、そんな表現をするなら「濃すぎるほどに濃い」、それほどに強い個性がある外観のある懐中時計です。
銀時計や金時計、懐中時計というだけでも、アンティークならではの古さや質感が漂いますが、これはさらにその上をいく魅力あるもの。
燻しや「黒光り」という言葉がぴったりと当てはまるような、そんな色合いのケースは、金や銀といった高級な素材とは違い、鉄を含む錆びる可能性を含んだ素材。
当たり前に考えれば、それこそ「避けて通る」素材であるはずですが、アンティークの時代には、期間的には比較的短い期間のみですが、このような素材を用いた懐中時計も作られていました。
そのような素材だからこそ、長い歳月をかけて培われた、このような替えの利かない魅力的な色合いが生まれています。
素材・色合いから、磨くこともできないものであるものながら、これだからこそという、特別な魅力がここにあります。
そしてその魅力をさらに引き出している、またお互いに高め合っているのが、時計の裏側に施された、銀の立体的な紋章のようなイニシャル。
時代的にはもちろん違いますが、そこから感じられるのは「王侯貴族」が用いる紋章であるかのようなその雰囲気。
そう思われるのは、そういった時代から続く培われた技術がここに用いられているから。
現代ではほとんど使われることのないものながら、この時代にはそれがこのような形で時計に表現されている。
それだけでも、とても感慨深いものでもあります。
表面に目をやっても、そこには100年以上前、世紀にすると3世紀をまたいだ、その当時ならではの懐中時計の姿。
白色の艶のある文字盤に、ブルースチールの針、そしてオメガの文字。
深い燻し色が美しく時計の表面、また側面にも出ていて、「古さ」という意味でとても素晴らしい雰囲気を醸し出しています。
隠れた職人技が冴える時代もの
時計の裏側に施されているのは、日本人から見ると紋章のように見えますが、実際はイニシャルを昔の形で表現したもの。
英語圏の方でも、現代では使わない読めないもので、非常に古い伝統的な技法です。
このような形を作ることが至難なことは、ご想像頂くだけでも難しいとお分かりいただけるものですが、ケースの内側を見ると、ケースに取り付ける際のその取り付け口まで非常に綺麗で、仕上げの美しさまでもが芸術的です。
店主のワンポイントと評価
総合評価
時代ならでは、この素材ならではという、個性と特徴が非常に良く出ている懐中時計です。
このような雰囲気が出せるのは、このように作られたものだからこそというもので、そもそもの数自体が少ないもの、そしてかつ、このように状態良く残っていなければ、最高といえる熟成具合になることがありません。
銀や金といった貴金属的な部分に魅力を感じられる方にはお勧めできませんが、アンティークならではの枯れ具合、そこに魅力を感じて頂ける方なら、これほど魅力のある懐中時計はなかなか見つかるものではありません。
写真から伝わる質感、そして裏面の装飾部分の立体感にとても雰囲気があります。
状態
写真では真っ黒に見えるところもありますが、真っ黒というほど黒いものではありませんので、あくまで自然な感じの灰色・黒という色合いになります。
ガンメタルと呼ばれている鉄を含む素材になりますので、色味に関しては全面一律同じ色ではなく、部分的にムラはあり、光の当たり具合・見る角度によっても違います。
また、ほとんどわからない部分ですが、文字盤12時の下に小さな針の先ほどの黒い点がありますが、傷などではなく製造時の塗料だと思われますので、取り除くことはできません。
希少性
年代的に数が少ないのは当然のことながら、この素材でこのように見事な装飾で、ここまで状態の良いものとなると、なかなか見つかりません。
贈り物
渋めのこのようなスタイルがお好きな方には、贈り物としてもまさに特別な1点ものとしてお勧めをしたいもの。
ケース自体は銀ではありませんので、その点において、貴金属的な価値よりも、骨董・アンティークとしての価値をご理解頂ける方にお勧めします。
備考