カーブを取り入れた特殊な形の腕時計
長方形の腕時計といえば、アンティーク時計では人気のデザインですが、そこに特殊な意匠を取り込んだのが、この腕時計の大きな特徴です。
時計を正面に見ていただくと、確かに長方形という形をしているものの、そこには、この時計ならではの特徴がたくさん。
一番特徴的なところは、ラグ(ベルトを留める部分)で、本来なら時計から真っ直ぐに伸びる足のような作りになっていますが、この時計では、少し内側に丸みを付けたデザインになっています。
このような作りになっているため、時計自体の幅と比べると、取り付けられるベルト幅が細くなっているのも大きな特徴で、少し大きな作りの時計に細身のベルトと、デザイン的な特殊さと着けた時の上品さが表れるような作りに仕上げられています。
またベルトを留める箇所が、ケースから少し離れた位置にあるのも特徴で、これもこの時計ならではの特殊な作りです。
ケース自体を横から見た姿も特徴的なもので、ケース・風防の形が、腕に沿うような緩やかなカーブを描いています。
ロンジンの40年代の人気を博した時計に多く見られるスタイルですが、早くもこの40年という節目の年の時計に見てとれます。
のちの年代には、時計の形に合わせて機械も長方形のものが用いられるようになりますが、そのような作りやデザイン的な意味でも、こののちに訪れる腕時計全盛期時代を迎える前の、新しい形を求めていた時代の時計だということが言えるでしょう。
店主のワンポイントと評価
総合評価
その年代の嗜好があり、40年代には長方形の時計が多くデザインされていますが、ただ単なる長方形というだけではなく、それに向かった40年代初頭のもの、そして、それに趣向を凝らした40年代後半以降のものと、それぞれの年代で違いが見てとれます。
後年のものほど、デザイン的に完成されている作りになりますが、初頭のものには、より粗削りな個性が光ります。
この時計がまさにそれで、着けていただいた時に、デザイン的な面白みを楽しんでいただけるものです。
状態
正面からの写真でおわかりいただけますが、文字盤に少し傾きが見られます。
文字盤裏にも、少し使用や経年による変化がみられます。
希少性
特殊な形で作られた数自体も少ないため、あまり出回りません。
贈り物
アンティークらしさもあり、作りの特殊さもある腕時計で、贈り物としてもお勧めできるものです。
落ち着いた上品さのあるデザインですが、少し好みのわかれるものではあります。
備考
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