トプンっと沼に引き込まれるように
この感覚、お分かりいただける方なら、感覚的にぐっと心を掴まれるものだと思います。
見た瞬間に、ゆっくりと沈み込むようにその雰囲気の良さに捉えられる。
感覚的に「深い」と言われる、そんな言葉が似合う懐中時計かと思います。
重い、重厚さとは違った、どことなく神々しいような深みという感覚に近いかもしれません。
この懐中時計にはこの懐中時計だからこそ出せる、だからこそ伝わる良さがある1品でしょう。
素材は実は銀ではなく、いわゆる一般的な鉄系統の金属で、それだからこそこういった色合い・雰囲気が出ていると言えるもの。
確かに金や銀と比べると、素材の上では価値としては比べ物にはならないでしょう。
しかしながら、この素材だからこそ、そしてそこにここまでの手がかけられたのは、この「品」に対して、同等の価値があると考えられたからでしょう。
この時計のデザインや雰囲気には、それを証明する特別さがあります。
美しい天使の装飾
懐中時計に施されているのは、花・蔦につかまる天使の姿。
ほど良い装飾の立体感と、この素材だからこそという深みのある色合い。
デザイン・モチーフ自体もアンティークならではで、表面また側面にも同様の装飾が施されていて、とても趣きがあります。
懐中時計自体としても、非常に古い1890年代のもの。
大きなサイズ感があり、時刻合わせもダボ押し(ボタン式)と呼ばれる、時計の肩付近にあるボタンを押し込んでからリューズを回すタイプ。
機械の作りとしても、一世代前の作りのもので、機械側にも機械を保護するための内蓋があるという点で、遊び心のある1点でもあります。
店主のワンポイントと評価
総合評価
天使の装飾と、「磨かない」この色合いの良さが光ります。
合わせられているチェーンも同様に金属製で、それに黒色の塗料を合わせたもの。
天使というモチーフや時計またチェーンの色合いから、おそらく金銀といった色合いを避ける葬祭用に用いられたものではないかと思われます。
金銀の懐中時計にお金を掛けられたことは、それは容易に想像がつくもので、この時計の持ち主のもとには、きっとこの時計に見合う金銀の懐中時計が並んでいたはずです。
葬祭用にここまでこだわった時計を用意されたということは、どれだけ特別なものであったかがわかるというものです。
当時そのように使われた、そのような目的で用意されたと推察される特別な品ですが、現代ではそういった用途に縛られない、非常に渋みと深みのある特別な懐中時計としてお愉しみ頂けるものだと思います。
そんな使い方もあるのかと思って頂けた方なら、今お持ちのコレクションに並べて頂ける、特別な使い方を楽しんで頂ける1点かと思います。
裏蓋は向きを変えて取り付けることができます。
現状は天使を3時から9時方向に、水平方向に位置するように取り付けていますが、斜めにしたり12時・6時方向で、上に昇るような向きに変えることもできます。
裏蓋を開けるための刃を入れる部分から考えますと、当時としては3~9時の水平方向に取り付ける形になっています。
状態
鉄系の素材ですので、写真で写らない箇所等にもわずかに錆びの出ている部分があります。
チェーンも同様に、写真では写りませんが錆びがでている部分もあります。
ただこういった鉄系の素材を用いた懐中時計も、この時代には数が少ないながらもあり、それらと比べると非常に状態が良いといえるものです。
また現在の風防はプラスチックが合わせられていますが、ご希望の場合はガラスに交換させて頂きます。
風防交換の場合は、取り外しの際に風防周りの接着剤を取らなければいけませんので、接着されていた部分を取って再接着となりますので、その部分での色味という点で、雰囲気を損なう可能性がありますので、その点をご了承頂いての作業となります。
希少性
年代も古く時計の機械としての世代も古い、デザインや作りとしても特別な1点です。
贈り物
当時の使われ方は別にして、現代では渋みと深みのある特別なアンティーク。
贈り物としてもとてもお勧めできる1点です。
備考
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