その時代のこの時計、風格ある特別な1点
腕時計が一般に広まり使われるようになったのは、時代的にはこの時計が作られた年代よりも、もう少し後のお話し。
それを考えると、このエルジンの腕時計、驚くほど早く作られた貴重なものなのでは?
そう思われた方もいらっしゃるでしょうし、お店によっては、当然のようにそのように売られているかもしれません。
しかしながら、この時計には、そういったお話し以上に、時代背景として筋の通った物語りと魅力があるものなのです。
この時計、文字盤をよくご覧頂くと、何か違和感がありませんか?
拡大した写真も掲載していますので、他の写真もぜひご覧になられてください。
その違和感の正体は、これが特殊な加工をされているものだということ。
何がどう違うのかというと、この機械・時代の機械と言えば、懐中時計全盛期とも呼べる時代ですので、文字盤も陶製の白色のもの。
この時計の文字盤もそれに違わず、同じ素材です。
しかしながら、ミリタリー調の数字・色とその辺りの色も少し変わっていますが、非常に雰囲気がありますね?
この部分、あくまで外観からの推測になりますが、少し厚めの紙になっているのではないかと思います。
写真や質感からもお分かりいただける通り、新しく加工されたものではなく、おそらく間違いなくこの時計が「腕時計」になったその当時のものかと思います。
こういった年季は現代に「意図的に作る」ことができるものではなく、その時代の加工の跡そして長い年月を経ることで生み出されるもので貴重な個性。
軍用時計として
なぜそのような加工がされているのかというところが、この時計の面白さの核心ともいえるところ。
この時計が「腕時計になった」のは、おそらくですが、第一次世界大戦の頃ではないかと思います。
この時代はちょうど世の中の流れとして、「腕時計」が必要な物として使われ始めた頃。
そして軍用時計というスタイルが確立されつつあり、蛍光の文字や針が視認性の高さから採用されるようになっていきます。
この時計はそれに合わせるように、おそらくは軍用品として使われるため・使われていたために、塗料を用いた見やすい文字や針等、その当時の軍用時計の用件を満たす形で、このように作られたのではないかと思います。
これらのお話が推測や作り話という感じがしないのは、このお話自体が時代背景やこちらが扱ってきた時計と照らし合わせても辻褄があう。
英語でいうところのMake Senseと言いますが、うなずけるものだからではないでしょうか。
腕時計のケースにしても、当時は懐中時計のサイズであった、6サイズという大きめの機械を収納するケースになっていて、当時の腕時計としては非常に大型であることも魅力。
といいますのも、腕時計の大きさ自体は2000年頃を境に、どんどん大きくなっていますので、このサイズであれば現代の時計と比べても、大きさや存在感では引けを取りません。
剣引き式という世代の古い時代の機械が使われていますので、時刻合わせには、ケースの4・5時の間にある小さなレバーを引き出してからリューズを回すことで、時刻を合わせることができます。
商品写真でもご紹介していますが、こういったひと手間を掛けて時計の操作ができるというのもそうですし、この時計のような「当たり前ではない特別な姿」こそ、アンティークの醍醐味というものでしょう。
店主のワンポイントと評価
総合評価
古びた外観や経年劣化しているところもありますが、それが魅力と言える1点かと思います。
時計の顔として面白いのはもちろんのことですが、ケースの形もそれこそこの時代ならではのもので、ケースだけにしても非常に珍しい作り。
合わせられているバンドもまた同様で、おそらくはその当時のもの。
古びての劣化などもありますが、新しいバンドに交換していないのは、この時計の雰囲気・この時計の価値に含まれるものだから。
バンドの表面にある小さな白い点々は、ペンキが撥ねたものではないかと思います。
この見事な「枯れ具合」を楽しんで頂きたい1点です。
カジュアルな外観ですので、女性でも着けて頂けないものではありませんが、時計自体が大きいため、その点をご検討いただく必要があります。
状態
文字盤に軽いヒビも見えますし、ケース・風防・文字盤からバンドに至るまで経年劣化が見られます。
状態としての評価は下げていますが、しかしながら、これらすべては時計の魅力としてプラスに考えて頂くべきものです。
希少性
このような作りのものは非常に希少で、同じものは手に入りません。
贈り物
非常に雰囲気の良いカジュアルな用途にお使い頂ける腕時計で、ご自身へのプレゼントには異議なく非常にお勧めの1点。
贈物という点では、経年劣化などもある特殊な外観ですので、あくまでご自身でお使い頂くという用途にお勧めします。
備考
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