青と銀、色の作り出す色彩美
現在の婦人物の腕時計というと、どちらかというと、紳士物が小さくなったようなイメージではないでしょうか。
また少し変わった形があったとしても、比較的定番のデザインになっています。
それが腕時計の初期頃1920年代まで遡ると、紳士物と婦人物では、時計そのものの形やデザインが男女で大きく違い、形を追っていくと分化していく様子がわかります。
女性用の腕時計が、女性のためだけのもので、そしてその作りやデザインが特殊なものになり始めた時代のこと。
そこには様々なスタイルが生まれ、新しい形にしようと、1940年代のデザイン的に完成された時代に至るまで、色々な工夫が施されていくことになります。
この時計が作られたのは、そんな時代、まだ懐中時計が普通に使われていた時のもの。
婦人物の時計へと、女性のための時計へと、その時代にある技術で試行錯誤が凝らされた、とても凝った作りを持った時計。
ケースの表面や側面に綺麗な装飾が施されて華やかな作りになっていて、時計の顔である表側には、サファイヤやダイヤモンドなどを鏤めた特別品。
宝石が留まっている周りのミル打ちはもとより、さらにそこにエナメルでの模様付けまで行われているのですから、時計がジュエリーとして確立されていく様が手に取るようにわかります。
特別な作りを持った、宝飾時計という名前が良く似合う1点。
銀に青・黒そして宝石の輝きと、色の組み合わせも品があり、アンティークらしさがたっぷりと楽しめる腕時計です。
店主のワンポイントと評価
総合評価
宝石などの施された時計はよくあるものですが、このような形をしているものは特に年代が古く、作りとしても珍しいものです。
ジュエリーという雰囲気を持つ時計でもありますが、エナメル装飾の入り方がなんとも言えない雰囲気を生み出していて、ちょっとした美術品のような趣きも併せ持っています。
現在合わせられている金属製のバンドは、時計に元々から取り付けられていたもので、金属・シルバー系の色合いでブレスレットのよう。
時計が縦長ですので、革バンドを合わせていただいても良く似合います。
革バンドを合わせて、また違った雰囲気を楽しんでいただくのもお勧めです。
状態
青い石は本来はもともと2点ともサファイアだったものですが、下側の薄い色の石はブルースピネルで、サファイアが無くなってしまったときに補修されています。
希少性
デザインや作りとして珍しいこともありますが、エナメル装飾の状態も良く、状態面も合わせて珍しいものです。
贈り物
現在の時計とは全く違う作りと雰囲気を持つ、まさにアンティーク品。
美術品的な顔も持つ時計でもあり、色合いとしても着けていただきやすいものです。
贈り物としてもとてもお勧めできる1点です。
備考
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