内側の彫りも美しい艶ある時計
懐中時計が主に使われていたのは、今から100年以上前のお話し。
古くは作られるその数自体も少なく、一般に出回るものではなく、上流階級でのみ持つことが許されたものであったもの。
それが1800年代の後半になり普及し始めると、そういった時代背景から、懐中時計にも、「より実用的なもの」そして「華やかさのあるもの」の2つに分かれていくことになります。
この懐中時計は、その中でも華やかな姿を持つ懐中時計。
アンティークの「古さ」だけではない、そこに芸術や美術的な美しさを加味したものが、この懐中時計の大きな特徴です。
青と金・銀の美しい装飾
それまでも文字盤に装飾が施されたものはありましたが、それが体系立てて、形として一段と美しくまとめ上げられたのが、アンティーク懐中時計で人気のあるエルジンとウォルサムの1つの功績。
この文字盤はその特徴と作りを伝えるもので、とても綺麗で繊細な文字盤を備えています。
小さな金の花のような各数字の下に施されたインデックス、そしてそれぞれの数字の間には、銀白色の美しい装飾。
また文字盤の中央、そして秒針の中央にも、青い色合いがご覧いただけるかと思います。
文字盤自体の色あいや装飾が美しいことはもちろんのこと、時計の針も非常に豪華なもので、懐中時計の美しさ・魅力が輝くように伝わります。
ケース自体にも綺麗な彫りが施されていて、これもまた繊細で美しい花模様。
よく見ていただかないとわからないのですが、実は表側と裏面で、少し意匠が違います。
一方は中央に向かって蔦が伸びているのですが、もう一面はそれがありません。
これはのちにイニシャルや家紋などを彫っていただくために、面としてこのように広く残されています。
デザインの美しさはもちろんのこと、空白をうまく取り入れていることで、非常に上品なデザインに仕上がっています。
そしてもう1点、ぜひともごらん頂きたいのが、この懐中時計の内蓋に施された彫り。
1904年6月17日に母親から子供に贈られた旨が、英語で彫られていますが、その彫りの見事なこと。
ただ単に名前だけではなく、シャンパンのような飲み物が弾けるさま、そしてその先に蝶が止まっているという、構図が非常に美しいもの。
先人たちの技術の素晴らしさは言うまでもなく、ここまでの彫り・装飾を施し、特別な顔の懐中時計を選んだこと。
そこに込められた想いと、その品の良さが、そこに掛けられた手間暇からも伝わってくる良品です。
店主のワンポイントと評価
総合評価
懐中時計のデザインや作りとして、まるで美術品のように、非常に綺麗で美しいもの。
ここまでのものであれば、決してないものではありません。
でもそれだけにとどまらず、やはりご覧いただきたいのは、この時計の内側に彫られた見事な彫り。
彫りの美しさやモチーフの見事さもありますが、このまま絵画として描いても絵になりそうな構図の良さは、見るものを引き込む魅力を持っています。
状態
側面に軽い窪みがあります。
希少性
ケースの装飾や文字盤の装飾だけでも、比較的珍しい部類に入ります。
ただそれだけでなく、状態面の良さありで、内蓋に施された彫りについてはまさに一点物。
イニシャルの入っているものは、比較的見ることができますが、ここまで見事な構図になっているものは、ほとんど見ることがありません。
贈り物
母から大切にされた子供への贈り物として用意されたもの、それだけに時計の美しさ・良さが際立ちます。
贈り物として非常にお勧めできることはもちろん、母から子供へまたその逆で子供から母へという想いを込めての贈り物であれば、なおさらにこの時計をお勧めしたいものです。
備考
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