英国そしてロンドンにこだわった英国メーカー
「英国王室御用達」。
日本でいえば皇室御用達のような、歴史と誇りある肩書きを持ち、長きに渡って紳士淑女に愛された英国ブランド・ベンソン。
肩書きを得ること、それ自体も難しいものであり、老舗の名家といえども、そこにたゆまない努力と一線級の輝きがあってこそ、長く愛されるブランドとなるものです。
時計作りから始まって、懐中時計から腕時計へ・手作りから大量生産の時代へと目まぐるしく移り変わった時代、そして大きな戦争の時代をくぐり抜けた、そんな時代に長きに渡って愛されたのが、英国の時計メーカーとして名を馳せたベンソン。
戦時中の工場の被災によって、時計を作り出すメーカーとしては早くにその歴史を閉じていますが、その後も長く英国を代表するブランドとして愛されたベンソンは、それぞれの時代に応じて、時計メーカーならではの時計を世に送り出していました。
この腕時計は、ベンソンが1950年代になって送り出した金時計。
古きを温め再び世に
1950年代といえば、腕時計の形としては、すでに現在に見られるような、丸型が一般的になり始めた時代。
腕時計の形が固定化され、それまでのデザイン性での競い合いから、作りやすさという量産性に大きく舵が切られた時代でもありました。
そのような時代の中にあって、ベンソンがその目を向けたのは、現在で言えば「復刻」とでもいえる、昔の形を踏襲し再び世に出すという路線。
作りとしては、クッションケースと呼ばれる独特の形をしたケースのもので、年代としては特に1920年代によく用いられたデザイン。
これを時代が完全に移り変わった50年代になって、改めて時計のデザインとして取り入れたのは、古きを知るブランド・ベンソンの面白さであると言えるでしょう。
50年代はベルトを留める方式も、ほとんどが現代のバネ棒方式が主流。
しかしながら、それすらも当時1910~1920年代に用いられたワイヤーラグというスタイルを取っているのも、その当時の作りをそのまま取り入れている手抜きの無さ。
金で作られた2ピースのケースをはめ込むという作りで、その中に腕時計の機械が収まる。
防水性を考慮して、裏蓋がスクリュー式になろうかという時代にあって、この時代になってこの形をと、驚かされると同時に懐かしさを感じるものでもあります。
時計好きからすれば、ここまで当時の色を出してくれているのは、なんとも愛らしい個性を感じられるもの。これらは、こだわりのあるベンソンならではというものでしょう。
ロンドンそして英国という名前を背負うベンソンの、昔を回顧したような味のある作りの金時計です。
店主のワンポイントと評価
総合評価
文字盤や機械・ケースに、MADE IN ENGLANDやLONDONなどの名前を入れ、ロンドンそして英国にこだわったベンソンですが、近年非常に見直され人気の出ているメーカーです。
正式な名前は、ジェームス・ウィリアム・ベンソン、王室や西欧で使われることの多い名前ですが、それだけに名前にも魅力のあるメーカー。
クッション型のアンティーク薫る雰囲気の良い形に、その年代の風を感じされる蛍光のインデックスや針もとても魅力的です。
状態
わずかに蛍光の落ち・文字盤の経年劣化はありますが、インデックスや針、金属製の文字盤であって、この状態の良さは、本当に特筆すべきほどのものです。
最上級の評価をしても良いものですが、感じ方の違いもありますので、少し落として評価をしています。
希少性
年代的に一般的に作られていた形ではなく、作られた数自体も少ないもので、ここまで状態の良いものはまず手に入りません。
贈り物
雰囲気そしてデザインの良さ、カジュアルさもあって着けて頂きやすいスタイルで、とてもお勧めできる1点。
当店で扱う商品としては、比較的新しい時代のものですが、それでもすでに70年ほどが経っている特別なものです。
贈り物としても非常にお勧めの1点です。
備考
針の塗料に少し落ちている部分がありますが、乾燥した泥がハリガネのような細い枠に付いているような状態のものです。
慎重に作業をさせて頂いても、落ちてしまう可能性がありますので、ご注文に際してその点はご了承ください。