傷や汚れも楽しむのが基本
アンティークの概念とは、使われそして長い歳月を経たもの。傷や汚れは必ずあるものです。
長い年月を経て円熟するのがアンティーク
「この商品は少し傷がありますので」とお値段が安くなるのは、一般に売られているいくつでも数がある商品のお話し。
アンティークの世界では、ほとんどの商品がオンリーワン。
その商品を逃してしまうと、同じものはなかなか手に入りません。
「あの商品、とっても気に入っているけれども少し傷が入っているから」と躊躇していると、それが売れてしまうと同じものは手に入らないということは良くあります。
あの状態でも買っておけば良かった・・・というのはお客様でも良く思われることですし、仕入れをする私たちでもそう思うことが多々あります。
こういった貴重なアンティークだからこそ、傷すらも楽しんでしまうのがアンティークの基本です。
ちょっとした傷が入っているもの・変色があるもの、そこに想いを寄せてみるのがアンティークを楽しむということです。
例えば、アンティーク家具で例えるなら、新品の家具が誰にも触れられずに倉庫に100年間眠っていても、そこには味わいも何も生まれないでしょう。
でも人に使われて100年を経た家具には価値が生まれます。
使い込まれた深い色合い、そして使われることで丸みを帯びたり、傷が付いてしまったり。
子供の落書きや爪あと・フライパンの焦げ跡というものもあるでしょう。
西洋のちょっとおしゃれなフランス料理店に行くと、カントリースタイルでこういった味のあるテーブルや棚が置かれていることがよくあります。
とても味わいのあるものですね。
昔の日本の陶磁器で例えるなら、割れたところを金で繋いでいるものに味わいが出て価値が生まれる。
またビンテージジーンズで例えるなら、ペンキが付いていていたりその破れ方によって価値が出たりするものです。
これこそが人に使われることによって出る、味わいであり雰囲気であり価値でもあります。
傷や汚れは愛されるべき歳月の贈り物
例えば、表面に模様の無い磨き込まれたケースで、表面に自身が映り込むほどの綺麗な懐中時計があったとします。
これをポケットに入れるとどうなるでしょう?
実はただ単にポケットに入れるだけでも、軽い擦り傷などは付いてしまいます。
これは時計に限ったことではなく、新しいジュエリーや貴金属にも当てはまり、革製のカバンやお財布でも同様に、ポケットに入れるだけで傷がついてしまうものです。
私たちが扱わせていただく時計にしても、傷が無い・割れが無い・さらに汚れまで無いとなると、本当にほんのごくわずかしかありません。
割合で言えば、補修が要らないものとなると本当にまれで、その割合は1%にも満たないほどです。
このような可能性から考えると、気に入った商品があるとすれば、その場で買わない手は無いというほどの確率だと思いませんか?
アンティークでは少しの傷や汚れは当たり前。
本当に完璧な品物は、数をたくさん作っていたメーカーの普及した人気商品であっても、100万円・1000万円を払っても手に入ることは無いかもしれません。
これは10年前のデジタル時計を買い求めるのでも同じです。
少し傷のあるものなら数万円で手に入るのに、新品だといくらお金を払っても手に入らないことに似ています。
10年ですらこうなのですから、50年・100年となると完全な品物は無いと言っても過言ではありません。
アンティークでは傷や割れ、汚れすらも楽しんでしまうのが基本です。
アンティークという性質上、50年・100年と使い込まれる、またこれだけの長期間となると、置いておくだけでも何かしらの劣化はあるものです。
例えば傷があったとして、この傷はどうして付いたのだろう?持っていた人が落としてしまったのかな?と想像すると楽しくありませんか?
1900年頃に作られたような昔の時計であったとしたら、その時計を持っていた人は裕福な暮らしをしていた人たち。
ここに傷が付いてしまったのはどうしてだろう。ここが割れたのはどうしてだろう。
そんな風に当時に想いを馳せていただくと、アンティーク時計はさらなる価値を増し、アンティーク時計と過ごす時間や価値はさらに高まるでしょう。
こういった考え方は、アンティークを扱うもの全般、アンティーク時計の博物館であっても同じです。
博物館に飾られるような時計は、「これは本当に素晴らしい」と時計に関わる人はもちろん、時計に関しては素人の方が見ても思えるほどの逸品ぞろい。
それでも、そういった逸品や選び抜かれた時計であっても、傷や割れなどは入っているものです。
それは最高の品を揃えているはずの、スイスの数々の有名な時計博物館ですらそうです。
その理由はやはり先に挙げさせていただいたとおり。
アンティークという一品物であるがゆえに、デザインや作り等が傑作や良品であるほど、同じものが無いのです。
その時計が持っている特徴であり美しさであり、デザインであり機械の作りでありといった傑出した部分が、博物館に飾られるほどの価値を持っているということになるのです。
時計はもちろんですが、アンティークをお選びになるときでも、ピンときたその1部分だけでも「愛せるもの」をお選びください。
恋をするように選んでいただくと、本当の意味でずっとお使いいただける時計をお選びいただけることになります。
次の記事を読む
「後悔しない」時計選びのポイント
お勧めトピック