買ってはいけない時計
作り自体に問題のあるものや、購入することにリスクの高い時計があります。
初心者の方には避けてもらいたいものがあります
アンティーク時計はとても魅力的。
懐中時計から腕時計まで、本当に個性的で手にしたくなるものです。
でも特に初心者の方には避けてもらいたいもの、のちのメンテナンスに難のあるもの、費用が掛かりすぎるものもあります。
すべてを紹介することはできないのですが、いくつか押さえておいてほしいポイント、避けてほしい時計があります。
わかっているリスクは避けて購入するのが正しい選択
アンティーク時計を気に入っていただけましたか?
でもちょっと待ってください。
時計の中には、初心者が手を出さないほうが良いものはもちろん、玄人の方も手を出さないほうが良い時計もあり、販売を専門に行う当店や高度な修理技術を持つ技術者ですら避ける時計というのもあります。
ここでは、購入の際にすでに問題があると考えられるもの、また扱い方など使用が難しいものや、修理・メンテナンスをしていくに当たって問題のある時計についてご紹介いたします。
下記に挙げる時計は、できるだけ避けていただきたいものです。
これは他店様やインターネットでご購入いただく場合でも同じで、時計を選ばれる際に「絶対に買わないで欲しいもの」や場合によっては「選択肢から外していただきたい」種類になります。
入手形態やご購入されるお店や場所によっては、さらにリスクの高いこともあり、ご購入後に問題があることが多々あります。
せっかくアンティーク時計という楽しい趣味を始められるのですから、できるだけリスクを避けてスタートしていただくのが、「興味」を「趣味」に変えていただく、長く続けていただくためのポイントです。
安すぎる時計には要注意
コピー品・模造品
常識的に考えて、「お宝・掘り出し物」のような金額で本物が売られていることは「ほとんどありません」。
そのほとんどが、コピー品などの偽物。
明らかに「値段がおかしい」ものは、避けていただくほうが無難です。
それらしい理由が付けられて販売されていますが、その真偽が判断できない状態では、本物に巡り合うことはありません。
【 バセロンコンスタンチンの明らかな偽物 】
原価を下回ることはありません
他店様のホームページをご覧いただいても、正当なオーバーホールには数万円の費用がかかります。
オーバーホール済みとして販売されているものが、明らかにオーバーホール費用よりも安ければ、まずまともな商品ではないと考えていただくべきです。
オークションなどで購入された商品をオーバーホールにお預かりしますが、部品のことを考えずに、外観だけをよくするためだけに磨かれた部品、オーバーホールとは名ばかりで油漬けにされた機械、あり得ない状態の時計を本当によく見かけます。
オーバーホールはもとより、その時計自体の原価もかかります。
正しく動く時計を商品として仕上げるには、1つだけ入手しても修理ができないものである可能性があり、そこには商品にならない「ロス品」というリスクが高く存在しています。
正当な商品の料金は、ロス率を考えた仕入れ原価、正しいオーバーホール料金によって成り立っています。
ご購入の前に「これだけ安くなるのか」どうかを、お考えいただくと、よりリスクを避けていただくことができます。
懐中時計を腕時計に作り替えたコンバート時計とも呼ばれる改造時計
特にオメガを中心に、ロレックスやIWCなどの高級メーカーのアンティーク時計によくみられるもので、主にオークションで売買されていることがあります。
古い大きな懐中時計が元になっているため、腕時計ではあるものの、直径が5センチ以上と大きいのが特徴で、文字盤に特徴のあるもの、裏側がシースルーになったもの、文字盤や機械自体が彫り抜かれたように装飾が綺麗で、機械の動きが見える等の加工が施されています。
【 特に目を引く加工が施されたもの 】
そのほとんどが海外で安価に制作されたもの、もしくは海外製の汎用的なケースを使用しているため、その機械自体に合わせて作られたものではなく、機械とケースの組み合わせという点で、機械がケースに留められない・リューズや巻き芯の位置との関係等、どの時計もかなり高い確率で問題があります。
本来であれば懐中時計としても十分流通するメーカーの時計でありながら、そのままでは販売できない問題を機械自体が抱えていることも多く、売れやすい「大きな腕時計」という形で、ただ単に売ることだけを目的に作られているものがかなり多いものです。
【 使用されるケースの一例 】
改造された時計の姿を人間に例えるなら、それはまるで包帯だらけで松葉杖をついたような姿。
リューズ・巻き芯の問題、心臓部分の問題、表から機械が見えることで歯車が抜け落ちるような欠陥、昔の機械を加工しているならまだしも、新しく作った偽物の粗悪な機械をアンティークとされている場合、メーカー名の刻印が偽造で入っている場合、時計によって本当に様々な問題を抱えています。
機械自体が偽物である可能性も高く、修理ができない・メンテナンスすらできない問題を抱えている可能性も高く、見た目の面白さから購入するにもそれなりの金額がかかるにも関わらず、リスクの非常に高い部類で、経験者も含め、特に初心者の方には絶対に手を出して欲しくないものです。
1800年代中期以前の古い時計
1800年台中期以前の製造年代が古い時計には、ケースに綺麗なエナメル装飾が施されていたり、機械部分や外観が特殊なものが多いのが特徴です。
年代の古さによる魅力があり、購買意欲をそそる時計が多いものです。
ただその見た目の面白さとは裏腹に、機械の作り自体が非常に古いため、「時計の機械」自体の作りや出来という意味では、1900年以降に主流になるスタイルとは、一世代・二世代も作りが違う、同じ時計でありながら作りが全く違うと言えるほどです。
【 エナメル装飾の施されたケース 】
一般に時計が広まったのは、1900年前後から。
ちょうどその前後から、時計の作り自体が完成に近づき、作りや動作ともに安定したものに出来上がっていきます。
言い換えれば、1900年前後の時計からは、一般に「使える時計」と言うことができます。
それに比べて、1800年代中期以前に作られたものは、「普及できるもの」ではなく、限られた人たちだけが持てる「嗜好品」。
一般に「普段使いできる」年代の時計とは、世代が違うほどの古い作りであるため、精度が期待できない、修理に関しても修理ができない、修理しにくい部分があります。
また、それが原因で無理に修理しているところがあったり、部品の破損の可能性や部品交換が極度に難しいという問題も合わせ持っています。
【 非常に古い時代の機械 】
作られた年代も非常に古いことから、経過している年数自体が長いため、故障や破損、また以前の修理に伴う問題点も多くみられます。
ご購入後のメンテナンスや修理という点でも、修理ができない・費用が膨大になるという、大きな問題を抱えることが良くあります。
この年代の時計にご興味がございましたら、一般の商品としてはお出ししていませんので、ご購入のご相談を承ります。
鎖引き式の時計
とくに鎖引きについては作りが特殊で、時計としての作りがまだ発展途上のものでもあるため、調整や修理自体も難しく、修理ができるお店や技術者を探すこと自体難しいという問題があります。
現在鎖引きを修理される職人の方は非常に少なく、今後修理をされる職人は確実にほとんどいなくなってしまいます。
また精度についても、熟年した職人でも「鎖引きで精度を出すのは至難」と言われるほど、機械自体の作りから、精度があまり期待できないものです。
例え状態の良いものを入手したとしても、オーバーホールの時点でお金を払っても請け負ってくれる職人が見つからない、または費用が非常に高額になる可能性があります。
【 鎖引き年代に見られる機械のカバー 】
【 自転車のチェーンのような鎖 】
シリンダー式の時計
シリンダー式については、こちらも少し作りとしては古いため、細かな精度の調整がしにくい・もしくはできない面があります。
少し時計の機械について知識をお持ちいただくと、写真にある部分で比較的簡単に判断していただけるものです。
鎖引きの難易度と比べると、対応ができる技術者も比較的多く、難易度は格段に下がりますが、初心者の方にはあまりお勧めできない作りの1つです。
精度を気にされる方には、特にお勧めできません。
【 特徴的なシリンダー式の心臓部分 】
8日巻き時計
古い機械式時計は、基本的には1日に1回ぜんまいを巻き上げてあげるものですが、中には8日巻き時計と呼ばれる名前のように、1週間に1度程度の巻き上げで済む時計もありました。
主に8日巻きを専門に製造していたヘブドマスHEBDOMASというメーカーが代表格で、時計の見た目が独特で外観が美しいため、購入意欲をそそられるものです。
1週間に1度程度の巻き上げで良いという便利な反面、一部の大手メーカーでも製造はされていましたが、比較的短い期間で製造を終えています。
毎日巻き上げなければならない時計を、一度巻くだけで何日も長く継続して動かせることから、本来であれば時計の主流となってもおかしくない構造ですが、大手メーカーが製造を継続しなかったのには理由があります。
【 ヘブドマスの8日巻き 】
通常1日だけ動かすものを8日間動かすのですから、稼働時間を8倍も長くする分、動力であるぜんまいも長く厚く非常に力のかかるものが求められます。
その分、ぜんまいの反発力も非常に強くなり、各部品にかかる負荷も非常に大きなもので、使用するには非常に強いぜんまいの巻き上げを繰り返すため、負荷のかかる部分によく破損が見られ、軸や穴も摩耗が激しく、8日巻き特有の破損や摩耗がどの時計にもかなりの割合で見られます。
現状では動いていても、実際には機械の状態がよくない、すでに破損や摩耗が起こっていることが多く、このような作りによる問題の起こりやすさが大手メーカーが追随しなかった、製造を手掛けても短い期間で製造を終えてしまった理由です。
数多くの修理を手掛けさせていただいていますが、どうしても摩耗が強く起こっている、破損が多いものの1つです。
外観や作りとしては非常に面白いものではありますが、壊れやすいという一面を持っていますので、初心者の方は、できれば避けていただくほうが良いものです。
ダラーウォッチと呼ばれる簡素な作りの時計
当時高価であった時計を、安く一般に提供するという目的から、一時期、非常に簡素な機械の時計が作られていたことがありました。
当時の値段で1ドルほどで販売されたため、英語でDollar Watch、1ドル時計という意味が名前の由来です。
趣旨としては、「使い捨てカメラ」のようなもので、機械式ではあるものの「使い捨て時計」として考えられたものです。
INGERSOLLインガーソルというメーカーが代表的ですが、日本でも人気のあるメーカー・SMITHSスミス名でも販売されていたため、スミスの時計をご購入の際には気を付けていただくことをお勧めします。
【 ダラーウォッチの機械 】
機械を見てみれば、作り自体が非常に簡素であることがお分かりいただけるもので、「使い捨て」というコンセプトから、「メンテナンスがなされる」という概念が外されて作られているものです。
そのため、通常であればネジを使って、取り付け・取り外しができるべき部品が、金属板の折り返しやかしめられているため、取り外しが不可能もしくは非常に難しい形になっています。
またその作りから精度自体もあまり出ず、機械式時計という位置づけではあるものの、その作りは「似て非なる物」です。
時計によってはミリタリー的な外観のものもあるため、見た目に魅力のある時計も数多くあります。
ただメンテナンスや修理が難しいもしくはできない可能性があることから、初回のメンテナンスから受けてもらえるところが無い、職人側からすれば作りがよくないため、一般の機械式時計よりも作業が難しくリスクが高いため、費用も高くなることがあります。
機械自体の作りがよくないため、初心者の方にはお勧めできない時計ですが、個性的な作りから熱心なコレクターがいる時計でもあります。
インガーソルのミッキーマウス時計
1930年代の時計ですが、見た目が可愛らしく、今でもその見た目に人気のある時計です。
ただし、当時一般的な時計が数十ドルで販売される中、1ドルほどで販売されていたもので、ダラーウォッチの機械が採用されています。
長く使用することを考えて作られてはいない「使い捨て」で、修理やメンテナンスができる作りではありません。
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