冴えわたる技術の結晶
「美しい」。美術館で綺麗な展示物を見たときに出るような、非常に短い一言ですが、その美しさに短い一言しか出ないという、そんな美しさを備えた懐中時計だといえるものです。
この時計の美しさこそが、100年という長い年月の間に忘れ去られた美しさであり、19世紀という世紀をまたいだ時代が紡いだ宝物だといえるでしょう。
現代ではあらゆる面で製造技術は発達しましたが、その昔に代々受け継がれた職人の技は失われ、なんでも早いことが要求される現代では、時間をたっぷりとかけ、まさに贅沢に時間を浪費して作り上げられるような商品は、世の中から消えてしまいました。
この時計の作りをご覧いただければ、その失われたものがどれほど貴重であったのか、紡がれ繋がれてきたもの・培われてきたもの、お金よりも贅沢な時間があってこそ作られるものの大切さが、肌身を持って感じていただけることでしょう。
アンティークが愛され続けるのは、現代の進みすぎた技術とともに、失われた美しい技と感覚がそこにあるから。
一つひとつをしっかりと作りこみ、美術品であるかのように仕上げ切る。
立体感のある陰影が美しいケースの装飾、美しいまでに細部までこだわった作り。
どなたにでもお勧めできるものではありませんが、この時計のデザインに魅かれた方にとっては、ほかでは手に入らない希少な1点です。
煌めくような個性
この時計の特徴の1つは、とにかく素晴らしい美しさをまさに「誇る」ケースの豪華な装飾でしょう。
このような彫金技術、同じような装飾を見ることは、高級百貨店でも高級ブティックにもありません。
技術が伝承され時間がかけられて作られる人の手による、まさに宝物といえるものです。
金・プラチナの銀色を交えた色の美しさと豪華さ、そしてその素材の豪華さ以上に光るのが、装飾自体の素晴らしさ。
中央の飾りはもちろんですが、それを取り巻く葉状の立体感のある装飾。
ただ彫っただけでなく、そこに立体感があるから、ケースの美しさにさらなる特別さを感じます。
また時計を開いてみると、内側にも非常に綺麗な金彩模様の文字盤とこの時代ならではの豪華な針。
各インデックスにはエメラルドが鏤められた非常に豪華で美しい色合い。
ケースを眺めてうっとりしてしまうような時間を楽しみ、そして時間を確認するために蓋を開けると、そこにもまた美しい時計の顔が現れる。
デザイン的にも美術的にも、まさに飾っておきたくなるような1点ものです。
店主のワンポイントと評価
総合評価
懐中時計を売る側の立場からでも、時に出会う美しい装飾には目瞠るものがあります。
たくさんある懐中時計の中でも、特別な1点となると、本当に希少で現代に残された希少なものです。
そっと懐に忍ばせて楽しむ・机に飾って楽しんでいただくのも良いものですが、ここまで綺麗なものとなると、外に出てついつい見せてみたくなるもの。
こんな時計を見たことがありますか?
ちょんとテーブルに置いたその姿に、周りの方が見とれてしまうほど。そしてまず話題にならないことがありません。
高級な現代のデジタル腕時計。それも確かにステータスですが、このような100年の風格を備えた懐中時計を嗜むのは、さらに優雅で楽しいものです。
1893年のクリスマスに贈られたことがケースの内側に刻まれていますが、当時としては非常に高価であった懐中時計、そしてその中でもこのような素材と装飾を施してまで贈った方、贈られた方はどのような方であったのかと、そういう想像をして時計を受け継ぐのも、アンティークならではの醍醐味でしょう。
状態
特記事項はありません。
希少性
写真では少し伝わりにくいかもしれませんが、ケースの作りは本当に格が違う別格品。
このような作りのものは、本当に1点もので同じものはまずありません。
贈り物
ここまで綺麗なものを贈られるのには、それなりの理由が要るというほどの豪華なものです。
備考
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