触って痛いと感じるほどの尖り
現代の腕時計はもちろんのこと、アンティーク時計であってもそうですが、丸みがあって触って「心地よい」というイメージではないでしょうか。
それは色々な時計を触ってきた、私自身も当然のことのように思います。
ですがアンティークの時代、当時卓越したデザインの時計を多数輩出していたグリュエンでは、そんなタブーがなかったのかもしれません。
イメージとしては、まさにやんちゃそのもの。
この時計の写真をご覧いただければ、それがどれほどのものか、お分かりいただけるかと思います。
なんといっても、触って「痛い」ほどの尖った風防(ガラス)、現代から見ても、その当時もそうだったのだと思いますが、周りを驚かせるには十二分なものだったことでしょう。
時計をなでて「痛い」と感じる、そして他の方にすれ違いざまに腕が当たるようなものなら、怪我をさせてしまうほどの鋭さがあります。
しかしながら、ここまでやりきった形にしたからこそ、群を抜くデザイン・個性になるのであり、自分だけの時計とより思い入れを持って使っていただける時計になるものだと思います。
煌びやかな上品さ
時計を美しく作る方法・見せる方法にこだわった時代があったとすれば、それは腕時計の全盛期と言われた1940年~1950年頃のこと。
時計としての製造技術や技法などがどんどん研究され、ある意味で1つの行き着くところに届いていたときであったからかもしれません。
文字盤のデザインにこだわることはもちろん、ケース・風防にも違いを生み出し、他のメーカーとの違いを図る。
現代でも同じことは行われていますが、この時代はそれが本当に顕著で真剣だった時代なのかもしれません。
ドレスウォッチと呼ばれるような上品な時計を作ることにかけては、グリュエンは研究に合わせて冒険を重ねるような、今からは考えられないような優れたデザインをたくさん生み出していました。
この時計がまさにその1つ。
現代では売れる時計でなければ作らないという前提があり、当たり障りのないデザインのものが多いのですが、この時代の勢いは、時計に当たりも障りも与えて、クセも匂いもつけすぎるほどに付けてしまうことができた時代でもあったのです。
このような時代であったからこそ生み出された、現代では傑出したデザインを持つアンティーク時計。
個性があるからこそ楽しいということを、改めて再確認させてくれるはずです。
店主のワンポイントと評価
総合評価
デザイン的に本当に傑出した腕時計。
スーツ・フォーマル向けには特によく似合うもので、着けて「時計を見せる」ということにかけては非常に煌びやかなものです。
仕事にはちょっと派手すぎるきらいはありますが、この時計を着けていて、時計が話題に上らないことがないほどの存在感があります。
クセのあるデザインだけに、気に入っていただけると、手放せない相棒になってくれるものです。
腕時計を着けることが当たり前だった時代から、せっかく着けるなら特別なものを。
時代を経て、時代が変わって再評価される、グリュエンのデザインの価値が良くわかる1点です。
状態
風防の突起部分に、写真でわかるかわからないか程度の、気泡・針の先ほどのわずかに小さな欠けがあります。
昔の風防には型番を記載したシールが貼られていますが、それを取り除いてわかったくらいのもので、製造時のものだと考えられます。
希少性
特別なデザインほど人気が出ていますので、年々入荷が難しくなる1点です。
贈り物
当たり障り有りでクセも有り。それだけに魅力も多い時計です。
気に入っていただけるなら、本当に愛用していただけるはずですが、特殊なデザインですので、贈る方の好みを正確に把握している場合にのみお勧めします。
備考
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