熟成された古酒を楽しむように
時計の楽しみ方は色々、それはまるで革製品のようでもあり、お酒を楽しむようでもあり。
共通するのは、デジタルやプラスチック製品といった「変わらない」ものではなく、使い込んでいくごとに変わっていく姿を楽しめることにあります。
ただし、それは昔の時計に限った「超限定品」といったところでしょうか。
現代の時計をご想像頂くとお分かりいただきやすいかもしれませんが、新しい時計はステンレスのケースに高い気密性、モダンで変化が無い安定した素材。
年月が経っても買った時と変わらない姿であることは、現代的な考え方から言えば、確かに重要なこと。
しかしながら、アンティークの世界では、良い方向に「変わること」こそが価値だと言えるのです。
このベンソンの腕時計は、こういった経年によって育てられた「熟成感」を楽しめる1本。
ワインセラーに並べられたワインのラベルを眺めて、お気に入りの1本をじっくりと選ぶ。
こういった熟成された時計を選ぶのは、そういった感覚に似ているかもしれません。
統一感のある質感、そして想像できるという良さ
この時計の一番のお勧めは、革バンドを含めての「統一感」。
熟成されているな・熟れているなと、そういった言葉がぴったりくるものではないでしょうか?
付属の革バンドは、現代とは違うワイヤーラグというタイプで、素材の厚みや強度としても非常にしっかりしていて、この当時のものというのは間違いのないものでしょう。
尾錠の形自体も現在の物とは違い、「革製品のアンティーク」という点では、このバンドのだけでも、その価値をしっかりと感じて頂けるもの。
時計に関しても、英国ベンソン、その名前の響きも美しく、古くは英国王室御用達のメーカー。
陶製の文字盤に昔の塗料が残っている、こういった形も美しい。
程よい古さ・使われたことによる使用感が出ているのも、時計としての統一感を高めています。
店主のワンポイントと評価
総合評価
貴金属ではない程よく使い込まれた感のある金属製のケースが素晴らしく、金属製だからこそ表られる、アンティーク感を増すの鈍い色合いが最高。
前時代的なクッション型のケースにワイヤーラグ(ベルトを巻き込んで留めるタイプ)。
文字盤の塗料に色の入ったちょっとしたヘアライン、革バンドに尾錠もおおよそ1世紀を経ているという、ひと目で格の違いが伝わるほどのアンティーク感。
この非常に見事な枯れ具合を楽しんで頂きたい腕時計で、あえて磨きなどもせず、質感を残してありますので、このままの状態で楽しんで頂きたい1点。
これぞお金を出してでも手に入れたい「枯れ感」というものだと思います。
メーカーも、古くは英国王室御用達、そして英国・ロンドンという名前にこだわったJ.W.BENSON(ベンソン)。
文字盤と機械にロンドンとその名を入れ、そしてケースはイギリスメーカーを採用していることから、MADE IN ENGLANDの刻印が入る。
時計としては、腕時計時代に入るとその当時の流行というよりは、一世代遅れた形のデザインを採用していたことの多いメーカーではありますが、それだけにノスタルジックな雰囲気を持つ時計も多く、「英国製」という響きが楽しいメーカー。
アンティークとしても、英国・ロンドンにこだわったメーカーということで、現代で見直されているメーカーです。
状態
文字盤にヘアラインがあり、塗料も若干飛んでいますが、アンティークらしい質感を高めているものですので、そのままの状態で仕上げています。
ケースの使用感や軽い傷、リューズにも摩耗・劣化がありますので、少し巻きづらさはあるものの、外観としてはこのままが良いのではないかと思います。
希少性
ベンソンの時計自体も数が少なく、このような見事な枯れ感のあるものとなるとなかなか手に入らないものです。
贈り物
明確に使う人を選ぶ・贈る人を選ぶ時計ですが、気に入って頂ける方には、「はまる」という言葉がぴったりの1点だと思います。
備考
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