持ち主であった方の愛が見える逸品
仕事柄、たくさんの懐中時計やチェーンを見てきましたが、このチェーンのように素晴らしいものはほとんど見る機会がありません。
まさにアンティークならでは、アンティークだからこそ、という良さを完全な形で備えているからでしょう。
写真をご覧頂いて、「この品は違うな」そう思って頂けるのはもちろんですが、そこに作り手や所有者の思いが見えるものは、なかなかあるものではありません。
このチェーンは、まさにそういった「思い」が見える1点もの。
一番の見どころは、馬の顔とその蹄が周りにデザインされた装飾部分。
馬の頭には星の装飾が施されているところも、これも非常に手の掛けられたものですし、蹄部分についてはそこに釘までデザインとして表現されているのには驚きの一言に尽きます。
そしてチェーンそのものに目を移すと、本来であればT字のバーである部分が「鞭」の形になっているのがお分かりいただけるかと思います。
またチェーンの中ほどにも、2つの飾りのようなものが隣り合っていますが、これは馬の「馬銜(ハミ)」。
懐中時計のチェーンが、おそらくは所有者・製作を依頼された方の「愛馬」への愛で満ちています。
すべてが特別
一つひとつを見ていっても、どれもが特別だと思われる作りになっています。
馬の飾り一つをみても、このチェーンのモチーフになった馬には、同じように星の飾りが付いていたのか、もしくは星状の班が出ていたのだろうなと、その馬を想像できるほどに表現されています。
そして蹄の部分の釘を表現している部分も同じで、ただ単に「デザイン性」というところで考えるなら、左右対称の8点でも良いはずです。
ところが左に3点、右に4点とわざと左右非対称にしているのは、その馬の脚にはこのように蹄鉄が打たれていたのではないかと想像させてくれるものです。
鞭についても、まさかT字バーを鞭に置き換えるとは思いもよりませんし、馬銜(ハミ)の形も当時もたくさんの種類があったはずですが、あえてこの形にしているのは、「この形」のハミを着けていたからでしょう。
店主のワンポイントと評価
総合評価
このチェーンは、所有者・製作を依頼されたと思われる方の、馬への愛で満ちています。
「このデザインで作る」とはっきりとした意思が感じられ、それをすべて取り込んで、チェーンのデザインとして完成していること。
懐中時計のチェーンという構造や使用、当時の形を一歩も踏み外していないこと。
これにはただただ驚きを感じざるを得ません。
状態
金張り部分にやや摩耗も見られますが、それでもとても良い状態と言えるものだと思います。
希少性
持ち主そして作り手、その時代といういろいろな要素がぴったりと合ってのこの形。
まず同じものの無い、特別な1点です。
贈り物
これを持って、何も感じられない方はいらっしゃらないのではないでしょうか。
アンティークならではの特別品で、馬をお好きな方にとっては、最上級の贈り物かと思います。
備考
–