戦争によって生み出された時計たち
第一次世界大戦そして第二次世界大戦と、それ以外の大小の紛争を合わせると、数えきれないほどの戦争の歴史が世界中に広がっています。
平時であれば「より便利に」となりますが、戦時中は戦争に関わるもの全てが、それこそ国の存続をかけて、守るべきもののために・勝つためにと、強制という大きな推進力のもとに進化、また変化を遂げていくことになります。
時計もまた、これらの大戦の中で大きな変化を遂げていったもののの1つ。
第一次世界大戦・第二次世界大戦ともに、大きなうねりの中で、時計もそれまでとは大きな変化を見せています。
携帯性を求め懐中時計から腕時計への移り変わり、時計の時間を確認するために蛍光塗料が採用されたり、より視認性を高めるために懐中時計がその息を吹き返したり。
シンプルに見やすく、実用性と生産性を上げるために。
万で数える軍用時計の生産・供給が求められたことから、各時計メーカーでの変化も大きなものでした。
美しき軍用時計の姿
ミリタリー・軍用時計というと、マニア的なイメージがあるものですが、実はアンティーク時計にあっては、そういったスタイルの時計もまた花形。
粗野なイメージこそありますが、実はこういった時代に作られたものが、現代のモダンな腕時計のスタイルやデザインに、数多く取り入れられていることに驚かれるはずです。
現在でも高級メーカーとして知られるジャガールクルトでさえ、軍用時計を供給していた時代がありました。
このジャガールクルトの懐中時計もまた、そういった第二次世界大戦中の、「美しい」軍用時計の1つ。
写真をご覧いただくと、デザイン自体は、現代にこんなデザインがあったら、人気になりそうなものだと思われませんか?
実用性を高めるために作られたものですが、12・3・9という必要な時間、また5分ごとのインデックス、大きく太い針への蛍光塗料の採用。
黒と特殊な色合いを見せる塗料の2トーンカラー。
シンプルでありながらデザイン的にも優れた雰囲気を見せるもので、サイズや作りなどもまた懐中時計としても面白く味わいがあります。
軍用時計として求められたものでありながら、後世になってもそのデザイン性の良さを見てとることができるのは、ルクルトの時計メーカーとしての誇りを感じずにはいられないものです。
ケース裏側には、アローとG.S.T.P.(General Services Trade Pattern・英国政府の軍用品として調達されたもの)の刻印があり、歴史を感じる時計の出自が伝わります。
店主のワンポイントと評価
総合評価
軍用時計も色々なものが作られていますが、このジャガールクルトの軍用時計は、明らかに他とは一線を画すもの。
その用途に応じて作られたものでしょうが、そこは第一線を行く時計メーカーの作ということで、デザインやサイズ・雰囲気に統一感があり、言われなければ軍用時計だったことも気づかれないものですし、それと知らずに使われている方もいらっしゃるでしょう。
カジュアルに楽しんでいただける懐中時計としては、今でも普通にお店に並んでいてもおかしくないほどの作りの良さだと思います。
状態
文字盤にわずかに経年変化と、当時の生産性向上のための素材・作りによるものですが、この時計に共通したもので、表面上に少し凹凸のある部分があります。
製造時の状態・素材、当時の仕様によるものですが、その中でも非常に状態の良いものです。
希少性
軍用時計として作られたもので、少ないながらも数はありますが、状態面の良いものとなると非常に珍しいものです。
贈り物
軍用時計という側面もありますが、時計として非常にカジュアルなスタイルのものです。
時計自体のデザインとしては、贈り物にも非常にお勧めしたい、個人的にも好きな1点ですが、作りや背景などをお考えいただいてお贈り頂くことをお勧めします。
備考
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