古き良き時代が見える時計
腕時計が一般に使われるようになってから、すでに100年ほどが経ちます。
その流れの中で、婦人物の腕時計は、紳士物に比べると、形やデザインなどに大きな変化を経ていきます。
それこそ初期のものはシンプルに懐中時計のようなものから始まり、40年代には非常に小さなものが好まれるようになり、その形が長く続いていくことになります。
ただそういった流れの中で、初期の形から定番の小さな時計になるまでは、様々な形が試行錯誤され、ジュエリーの技法を取り込んだもの・宝石を鏤めたもの。
その時代の技術でできることを盛り込み、男性の腕時計とは一線を画した、「女性の腕時計」という形を生み出そうとしていた、その努力をうかがい知ることができます。
この腕時計は、そんな流れの中で生まれた、良い特徴を備えた1点です。
文字盤とケース装飾が華やか
この時計の魅力は、写真をご覧頂くだけで伝わる、そのケース装飾の美しさにあります。
この時代ならではのものですが、こういった「ラグ」(バンドを留める足)が無い、邪魔するものが無い、綺麗な長方形という形の良さ。
そこに時計の表面はもちろん、側面・裏側にも装飾が施してあり、時計を横からみても、また外した時に楽しんでいただけるという作りになっているのは、「生産性」や「合理性」といった面だけで推し量らない、作りたいものを作っていた、そんな時代の良さが感じられるものでしょう。
長方形のケースの中にのぞく、細長い楕円形の文字盤も、長方形のケースのスタイルにとても良く合っています。
文字盤に施された装飾、また銀と金のコントラストも美しく、リューズも特殊な作りのもので、とても見どころの多いものになっています。
バンドにも装飾が施されていて、バンドの時計側の取り付け部分がシンプルな面になっていることで、時計自体のデザインが引き立つというのも、意図せずというところではあるのでしょうが、この時計とはとても良い組み合わせになっています。
今も変わらない高級ブランドが並ぶ通り、ニューヨークの五番街の時計ブランドであるブローバ。
その栄えある名前が、「Fifth Avenue NEW YORK」とケースにも記載されています。
店主のワンポイントと評価
総合評価
どのメーカーの時計も同じように見えてしまう。自分だけの個性ある時計が欲しい。
そんな思いで時計を探されている方がいらっしゃれば、この時計はそんな希望を叶えてくれて、好きな時計を見せるという楽しみも与えてくれるものでしょう。
どこから見ても明らかに違う、時計から放たれる輝き・存在感は、この時計の個性から生まれてくるもの。
あ、この時計違うな。良いものだなと、素直に感じていただける1点かと思います。
状態
バンドも同じ時に付けられたもので間違いない年代物ですが、裏側にメッキの剥がれなど経年変化が見えます。
ただ表面の状態は、素材などから考えても申し分なく、状態面としてはとても良いものだと言えるものです。
機械の写真でケースと一緒に取っている1枚で、黄色っぽくなっているものがありますが、これは当時としては珍しく、機械にプラスチックのカバーが掛かっているためで、そのプラスチックの変色によるものです。
希少性
年代的に様々な形が作られていた時代でもあり、状態面なども含めてなかなか手に入らない1点です。
贈り物
バンドの裏側に少し経年変化は出ているものの、時計のデザインや雰囲気が、バンドを合わせた雰囲気としても良く、贈り物にもとてもお勧めしたい腕時計。
100年ほど経った時計と考えて頂ければ、その美しさがしっかりと伝わる1点だと思います。
備考