時計の日常のお手入れ
アンティーク時計のお手入れは、毎日の見守りと定期的なオーバーホールを受けることが基本です。
お手入れは実は簡単シンプル
アンティーク時計の日常のお手入れは、基本的には「見守る」こと。
機械は職人だけが触る部分なので、動かしてあげること・綺麗にしてあげることが大切。
使わないほうが良い商品やクリーム、こうすると元気に長持ちするという方法。
あまり変な手を掛けない、やってはいけないことはしない、押さえておきたいポイントをご紹介します。
機械の調子を保つために
日々のお手入れで重要なのは、毎日ご機嫌よく時計に動いてもらうこと。
アンティーク時計の場合、知っておくと良いことがいくつかあります。
実はカメラや車とは違い、ご自身で機械に油を差したり、部品を調整したりといったことはできません。
それだけに、時計を調子よく動かしてあげることに必要なことは、至ってシンプルです。
定期的に動かしてあげることがミソ
毎日もしくは数日に一回でも、「日常使っている時計」であれば、気にしていただく必要はありません。
ただし、使用頻度が極端に少ない場合は、適度に動かしてあげてください。
例えば1か月に1度程度、もしくはそれ以上の間隔でしか使わない時計であれば、できるだけ1週間に一度くらいは動かしてあげるようにしてあげてください。
これは資料や書物に、そのように使っていただくほうが良いという指南や、お勧め方法として書かれているわけではありません。
時計の販売・修理に携わり、そして自らも時計を使っている者の経験から、実際に感じられること。
動かしている時計と、置きっぱなしになってしまっている時計では、定期的に動かしてあげているもののほうが、圧倒的に良く動いていてくれるからです。
旅行に出てしばらく動かさなかった車の動きが悪い、しばらく置きっぱなしになっていた車の動きが悪くなったというご経験はありませんか?
時計にも同じようなことが起こります。
長期間動かさない場合、油が固まって抵抗になるということもありますが、金属の小さな部品で構成されていますので、しばらく動かさないでいる車のエンジンが掛かりにくい・調子が出ないのと同じで、時計の調子も良くない傾向にあります。
人に例えてみても、普段から体操やストレッチをしている人と、そうでない人との違いのようなもの。
使用頻度が少なくても、時々でも使う時計であれば、できるだけ定期的に動かしてあげてください。
毎日決まった時間に巻き上げることで体調チェック手巻き時計の場合、一般的には1日半ほどで、ぜんまいの力が無くなり止まります。
毎日使う場合は、毎日巻き上げてあげることが必要になりますが、できれば決まった時間帯に巻き上げてあげるようにしてください。
そうしなくても特に問題があるわけでも、支障があるわけではありません。
ただ、同じ時間帯に巻き上げることで、問題を早期に発見できます。
朝起きてや仕事に行く前に、巻き上げるようにクセ付けをすると、「いつも同じ時間帯に時計を見る」という習慣になります。
このようにするメリットは、いつもの同じ時間・時計を巻き上げる時点で、誤差が広がっている・止まっている、という状態の変化が確認しやすくなるからです。
例えば、朝7時に巻き上げることを習慣づけたとして、巻き上げの時に、時計が7時20分を指していれば、20分の誤差が出たとすぐにわかります。
いつも数分の誤差程度であれば、誤差が大きく広がっている・何か不調があるということになります。
また4時40分で止まっていたとすると、夕方は時計を見ているはずなので、朝の4時40分に止まったのだろうと、おおよそ何が起こったのか知ることができます。
そういえば、昨日落としてしまったことが原因かもと、心当たりにすぐに気付くかもしれません。
このように使っていくと、時計に問題が起こってもすぐにわかります。
巻く時間がバラバラであれば、24時間での誤差がどのくらいなのか、いつ止まっているのかが正確に把握できず、問題がわかりにくくなります。
例えば、朝巻き忘れたのか、それすらも忘れてしまっていれば、30時間ほど経って、ぜんまいがほどけきったことが原因で止まっているにも関わらず、どうして止まったのだろう?と心配することになります。
同じ時間に巻き上げてあげると、時計の健康状態を毎日チェックするようなもので、問題が出ても気づきやすくなります。
まったく使用する予定が無い場合は動かさない
もう使わなくなった時計、1年・2年など長期にわたって、使用することがまったくないと考えられる時計は、「動かさず」に保管します。
動かすということは、厳密にいえば、わずかでも磨耗が起こるということになります。
まったく使用しない時計であれば、動かさずに保管し、使う時が来たら、オーバーホールをしてから使い始めてください。
使用に当たって気を付けること
磁気を避ける
パソコンや携帯電話など、今や時代はデジタルで、どこに行っても磁気はあります。
あまり気にしすぎると、使うことすらできなくなりますので、明らかに強い磁気があると思われるものは、避けていただく形で使っていただくのが一番です。
【 磁気を帯びやすい昔からの定番の置き場所 】
・冷蔵庫やテレビ・パソコンのすぐ横に置く
・エレベーターの中の壁側に手を組む(エレベータの中には非常に強い磁気が発生しています)
基本的には常識的な強さの「磁気」だけであれば、部品を壊すようなことはありません。
誤差や動作不良という形になることはありますが、元に戻せる対応ができるものです。
状態によって磁気抜きのみ、もしくはオーバーホールという対応で、修理のできるものですので、常識的な範囲で気を付けていただいて、使っていただくのがお勧めです。
時計の磁気帯びについての、より詳しい記事もご用意しています。
時計の磁気帯びとは 落とさないように気を付ける
製造された年代が進み、1960年代以降になると、壊れやすい部分を保護する、クッション・耐衝撃性能を持つようになります。
それまでのものは、特に古いものはそうですが、落としてしまうと軸が曲がったり折れたりして、故障の原因になりやすい面を持っています。
腕時計の場合は、落とすことは少ないのですが、懐中時計は比較的手から滑ってしまって、落としてしまいやすいものです。
【 耐衝撃性を示すSHOCK RESISTANTと刻印されている時計 】
また特に大きな懐中時計の場合は、時計自身の重みもあるため、比較的低い高さから落としてしまっても、破損する可能性が高くなります。
外観的にダメージが無い場合でも、機械の歯車などの軸が折れたり曲がったり、問題が起こることもあります。
できるだけ落とさないように、衝撃を受けないようにお使いください。
水が入らないように気を付ける
アンティーク時計の場合は、ケースの本体と蓋を噛み合わせて絞めるタイプが一般的。
かみ合わせをできるだけ良くし、巻き芯の穴やかみ合わせの位置を底面から離すことで、少しでも汗や水が入らないような作りになっています。
年代が進むにつれ、ケースの蓋の開け閉めは、スクリュータイプ・ぐるぐるとネジを回すように開け閉めを行うタイプに変わっていきます。
ケース同士を噛み合わせるタイプにしても、古い時計が金属同士であるのに比べて、新しい時計の場合はパッキン(ゴム)を防水素材として挟んでいます。
このような作りを持つことで、時計の防水性能は格段に向上していきます。
【 時計ケースの噛み合わせ部分の黒いゴムパッキン 】
新しい時計が、機能的に防水を備えていることに比べると、古い時計は努力的に防水を行っていると形容することができるでしょう。
時計にもよりますが、防水機能はありませんので、なるべく汗や水が入らないようにお使いください。
保管する際のご注意
アンティーク時計をお使い頂く際と同じこともありますが、保管場所にも少し気を使って頂く必要があります。
湿気がこもらない場所を選ぶ
古い年代のアンティーク時計には、気密性がないため、基本的には周りの空気が内側にも影響を及ぼします。
特に浴室近くや台所・洗面所など、頻繁に水を使う場所には置かないこと。
また見逃されがちですが、窓際など冬場に結露するような場所は湿気が溜まる場所ですので、置かないように気を付けてください。
内側にこもる湿気は、風防が曇ることでわかることがありますが、そうなっているのはよほどの湿気が入っている状態です。
風防が曇っていなくても、湿気の多い場所では、内側も同様に湿気に触れていると考えて下さい。
湿気は部品の錆びの原因となります。
タンスには入れない
大切な着物や服をタンスに入れる場合、防虫剤や除湿剤を入れるように、タンスの内側は湿気が溜まりやすいものです。
また防虫剤等によって、時計の文字盤表面の塗料や部品などに対して、化学変化による劣化が起こることがあります。
磁気の無い場所を選ぶ
テレビや冷蔵庫、携帯電話やパソコンなどの近くに保管しないようにしてください。
これは使用に関しての「磁気を避ける」でご案内している通りで、保管の際は長時間磁気にさらされることになります。
時計を綺麗に保つには【外観のお手入れ】
時計を仕舞う時に、指紋を取るように拭くと、変色などを少し防ぐ効果があります。
しばらく使わない時は、できるだけ綺麗に指紋を拭き取り、軽く表面を磨いてから保管します。
銀や金の外観を持つアンティーク時計は、しばらくすると、色がくすんでくることがあります。
特に銀の場合は、銀特有の黒ずみが全体にでてきます。
そのような場合には、研磨剤を含んだ布で磨いてください。
ただし磨くとは言っても、サンドペーパーのようなイメージで、ゴリゴリと傷を削る取ることができるわけではありません。
「傷」として目視できるものは、消してしまうことはできません。
磨いた後は「傷」が見えなくなりますが、「輝き・照り」が出るため、それで見えにくくなるというのが正しい状況です。
「ジュエリーのように・新品のように綺麗に」という状態まで戻す場合は、仕上げ直しをご依頼ください。
研磨剤が最初から含まれた布で磨くのがお勧め
市販されている時点で、研磨剤などが布に含まれた状態で販売されているものがあります。
磨くことを目的でご利用いただく場合は、こちらをお使いいただくことをお勧めします。
【 定番のメーカー 】
■ ハガティ社(Hagerty)の研磨剤の含まれた布
最も定番で、日本を問わず世界各国で利用されているジュエリー磨きです。
用途に応じて、シルバー・ゴールド用などがありますので、磨くものに合わせてご購入ください。
http://www.hagerty.co.jp/(日本)
■ セルヴィット社(SELVYT)の研磨剤の含まれていない布
こちらも歴史の古いジュエリー磨きです。
この写真の布には、研磨剤が含まれていません。
http://www.selvyt.co.uk/(英国)
この2社以外にも、たくさんのジュエリー磨き用の布が販売されています。
ジュエリー店で手に入るものもあれば、100円ショップで手に入るものまで多種多様です。
よほど質の悪いものでない限りは、基本的には昔からある普及された商品であるため、ある程度のメーカー品を使っていただければ、大きな違いは感じられないはずです。
いくつか試していただいて、お好きなメーカー品をお使いください。
必ずしも、ご紹介したメーカーの品をお使いいただく必要はありません。
磨き用の布は交換する消耗品
ジュエリー磨きの布は、繰り返し長い間使用すること、また洗って再利用できるものではありません。
塗布されている薬液が無くなったと感じられる、もしくは布自体の劣化が出た時には、必ず新しいものと交換してください。
古いまま使い続けると、布が朽ちて綿埃・微粒子が発生するため、これも機械の中に入ってしまう可能性があります。
布全体のどの箇所でも磨けますので、布がある程度真っ黒になるくらいまで使っていただいて問題ありません。
磨いても以前ほどの輝きが出なくなった・綿埃のような糸くずやゴミが布から出るようになったら、必ず交換してください。
液状またはクリーム状の研磨剤はできれば使わない
磨き・テカリを出すための研磨・メンテナンス用のクリームがありますが、できればクリーム・液状のものは使わないでください。
ジュエリーであれば問題ありませんが、時計の場合は、ケースの隙間からクリーム・液体が、ケース内に入ってしまう可能性があります。
入ったとしてもわずかな量ですが、クリームや液状のものは、乾燥すると粉になります。
繰り返し入ってしまうと、細かな粒子が部品に取り付き、油の中に混ざると、油の固化を進めてしまいます。
それらが抵抗を生み、止まりや誤差の原因となります。
【 乾燥して粉状になったクリーム状の研磨剤 】
メッキものは極力磨かない
年代が進むと、金メッキなどのメッキが施されているケースが増えていきます。
金メッキ自体は非常に厚み自体が薄く、何度もごしごしと磨く・擦ってしまうと、メッキ自体が剥がれて無くなります。
研磨剤を含んだ布で「磨く」のではなく、それに含まれる「ツヤと照りなどの輝きを出す成分」を撫でて塗りつけるというイメージで磨いてください。
素材そのものを磨くのではなく、布に含まれる「成分」を表面に塗ることで、ツヤと照りを出します。
金張りは金メッキに準じる程度に
GOLD FILLEDと表記される金張りは、金メッキとは大きく違います。
サンドイッチに例えると、下地の金属が具材の部分で、パンのように表と裏に薄い金の板が張り付けられているような構造で、しっかりと金の部分自体にも厚みがあります。
メッキと金張りの違いをイメージしていただくと、金属の表面にマジックペンで金色に塗ったような技法がメッキ、かなりぶ厚いアルミフォイルを表に貼ったのが金張りというイメージです。
インクや塗料程度の厚みしかないため、つかむことができないのが金メッキ。
薄い金の板として、つかむことができ、厚みを計測することができるのが金張り。
厚みという点では、それぞれの質にもよりますが、厚みにして100倍ほどの大きな違いがあります。
そのため、基本的にはメッキと比べると、金張りは少し磨きには強いという点があります。
ただ金張りも年月や使用によって薄くなっている場合があり、下地が出てしまっていることもありますので、メッキ同様に、軽めの磨きに留めていただくことをお勧めします。
無垢素材は比較的しっかりと磨ける
金無垢や銀無垢素材であれば、ある程度はごしごしと磨いてもかまいません。
銀無垢の場合は、一般的にかなり厚みがあるため、磨いて減りを感じるような厚みではありません。
ただし、金無垢の場合は、ケースによって厚みがまったく違います。
軽く押すだけで、ペコペコと凹んだり戻ったりする厚み程度しかないものもありますので、あまり強く磨かないほうが無難です。
しっかりとした厚みのある金であれば、ごしごしと磨いても、大きな影響はありません。
例えを挙げると、厚みのある金であれば、上記でご紹介したジュエリー磨きの布で、1000回ほど強く擦っても、0.01グラム単位の変動もありません。
定期的にオーバーホールを受ける
オーバーホールという言葉・サービスをご存知ですか?
今まで新しい時計・デジタル時計しか使ったことがない、時計にあまり詳しくない方なら、ご存じなくても当然です。
新しい時計をお使いの場合であれば、機械式時計をお持ちの方でも、しっかりと調べられている方か、長く使い込まれてメンテナンスを受けられた方だとご存じだと思います。
オーバーホールとは、時計を分解し、部品の洗浄・注油を行い、改めて組み直すという工程を行います。
車なら車検のようなものです。
アンティーク時計の場合は特に、このサービスを「定期的」に受けていただくことが重要になります。
歯車などの小さな金属部品で動いていることから、他の機械などと同じように、潤滑油が必要です。
また長期間動いていることで、油自体や油とホコリなどが混ざって小さなゴミとなり、磁気を受けていくことでも、時計の動きは弱まっていきます。
それらを解消させるのが、大がかりなメンテナンスを行う「オーバーホール」です。
このオーバーホールを受けていただくことで、時計のメンテナンスが行えることはもちろんですが、進行中の錆がないか、極端に摩耗している部品や破損しそうな部品が無いかなど、重症化しそうな問題を防ぐこともできます。
人に例えると健康診断のように、進行中の病気を食い止めたり、起りそうな病気を予防できるという側面を持っています。
オーバーホールのご相談は、当店までお気軽にお声おかけください。
絶対にご自身で油を差したりしないでください
車のボンネットのように、所有者が時計の蓋を開けて、メンテナンスの一部をご自身で行っていただける部分は一切ありません。
油を差すにしても、全て資格と技術のある職人が行う領域になります。
油を差すという言葉は使いますが、車やカメラ・ミシンに油を差すのとはまったく違います。
それぞれの部品が極端に小さく細いため、ごくわずかに差す箇所や油を貯める箇所、柔らかい油や固い油・グリースなどの使い分けを行い、油が抵抗となって部品の動作を阻害しないように作業を行うことが必要です。
不要な部分に油が付いてしまえば、それが重りとなって精度を大きく狂わせてしまいます。
ケースの蓋を開けてしまえば、内側で部品がくるくると動き、気流を作っていますので、小さなホコリが吸い込まれます。
ご自身で行っていただいて、良い結果になることは絶対にありません。
ホームページなどで、自分で注油する方法などを紹介しているものもありますが、時計の内側はご自身でお手入れしていただける部分は、残念ながらありません。
この点は、絶対に忘れないでください。
オーバーホールは何度も受ければよいというものではありません
時計の精度が良くなるのなら、毎年のように頻繁に受ければよい、とお考えになる方もいらっしゃるかもしれません。
しかしながら、ネジや針などの部品を締めたり緩めたりを繰り返すということは、厳密にいえば、金属疲労や部品の摩耗もわずかながらでも伴います。
程よい期間で受けていただくのが、時計のためになります。
建て前としては、3年に一度のメンテナンスをお勧めはしていますが、時計によっても保管やご使用状況によっても違います。
機嫌よく動いてくれている時計で、問題も無いようであれば、3~5年に一度をめどに受けていただくことをお勧めしています。
次の記事を読む
プロが教える使い方の基本
懐中時計チェーンの着け方
お勧めトピック
毎日使う場合は、毎日巻き上げてあげることが必要になりますが、できれば決まった時間帯に巻き上げてあげるようにしてください。
ただ、同じ時間帯に巻き上げることで、問題を早期に発見できます。
このようにするメリットは、いつもの同じ時間・時計を巻き上げる時点で、誤差が広がっている・止まっている、という状態の変化が確認しやすくなるからです。
いつも数分の誤差程度であれば、誤差が大きく広がっている・何か不調があるということになります。
また4時40分で止まっていたとすると、夕方は時計を見ているはずなので、朝の4時40分に止まったのだろうと、おおよそ何が起こったのか知ることができます。
そういえば、昨日落としてしまったことが原因かもと、心当たりにすぐに気付くかもしれません。
このように使っていくと、時計に問題が起こってもすぐにわかります。
例えば、朝巻き忘れたのか、それすらも忘れてしまっていれば、30時間ほど経って、ぜんまいがほどけきったことが原因で止まっているにも関わらず、どうして止まったのだろう?と心配することになります。
動かすということは、厳密にいえば、わずかでも磨耗が起こるということになります。
まったく使用しない時計であれば、動かさずに保管し、使う時が来たら、オーバーホールをしてから使い始めてください。
あまり気にしすぎると、使うことすらできなくなりますので、明らかに強い磁気があると思われるものは、避けていただく形で使っていただくのが一番です。
・冷蔵庫やテレビ・パソコンのすぐ横に置く
・エレベーターの中の壁側に手を組む(エレベータの中には非常に強い磁気が発生しています)
誤差や動作不良という形になることはありますが、元に戻せる対応ができるものです。
状態によって磁気抜きのみ、もしくはオーバーホールという対応で、修理のできるものですので、常識的な範囲で気を付けていただいて、使っていただくのがお勧めです。
それまでのものは、特に古いものはそうですが、落としてしまうと軸が曲がったり折れたりして、故障の原因になりやすい面を持っています。
腕時計の場合は、落とすことは少ないのですが、懐中時計は比較的手から滑ってしまって、落としてしまいやすいものです。
外観的にダメージが無い場合でも、機械の歯車などの軸が折れたり曲がったり、問題が起こることもあります。
できるだけ落とさないように、衝撃を受けないようにお使いください。
かみ合わせをできるだけ良くし、巻き芯の穴やかみ合わせの位置を底面から離すことで、少しでも汗や水が入らないような作りになっています。
ケース同士を噛み合わせるタイプにしても、古い時計が金属同士であるのに比べて、新しい時計の場合はパッキン(ゴム)を防水素材として挟んでいます。
このような作りを持つことで、時計の防水性能は格段に向上していきます。
時計にもよりますが、防水機能はありませんので、なるべく汗や水が入らないようにお使いください。
特に浴室近くや台所・洗面所など、頻繁に水を使う場所には置かないこと。
また見逃されがちですが、窓際など冬場に結露するような場所は湿気が溜まる場所ですので、置かないように気を付けてください。
内側にこもる湿気は、風防が曇ることでわかることがありますが、そうなっているのはよほどの湿気が入っている状態です。
風防が曇っていなくても、湿気の多い場所では、内側も同様に湿気に触れていると考えて下さい。
湿気は部品の錆びの原因となります。
また防虫剤等によって、時計の文字盤表面の塗料や部品などに対して、化学変化による劣化が起こることがあります。
これは使用に関しての「磁気を避ける」でご案内している通りで、保管の際は長時間磁気にさらされることになります。
しばらく使わない時は、できるだけ綺麗に指紋を拭き取り、軽く表面を磨いてから保管します。
特に銀の場合は、銀特有の黒ずみが全体にでてきます。
そのような場合には、研磨剤を含んだ布で磨いてください。
「傷」として目視できるものは、消してしまうことはできません。
磨いた後は「傷」が見えなくなりますが、「輝き・照り」が出るため、それで見えにくくなるというのが正しい状況です。
磨くことを目的でご利用いただく場合は、こちらをお使いいただくことをお勧めします。
■ ハガティ社(Hagerty)の研磨剤の含まれた布
最も定番で、日本を問わず世界各国で利用されているジュエリー磨きです。
用途に応じて、シルバー・ゴールド用などがありますので、磨くものに合わせてご購入ください。
http://www.hagerty.co.jp/(日本)
こちらも歴史の古いジュエリー磨きです。
この写真の布には、研磨剤が含まれていません。
http://www.selvyt.co.uk/(英国)
ジュエリー店で手に入るものもあれば、100円ショップで手に入るものまで多種多様です。
いくつか試していただいて、お好きなメーカー品をお使いください。
必ずしも、ご紹介したメーカーの品をお使いいただく必要はありません。
塗布されている薬液が無くなったと感じられる、もしくは布自体の劣化が出た時には、必ず新しいものと交換してください。
古いまま使い続けると、布が朽ちて綿埃・微粒子が発生するため、これも機械の中に入ってしまう可能性があります。
ジュエリーであれば問題ありませんが、時計の場合は、ケースの隙間からクリーム・液体が、ケース内に入ってしまう可能性があります。
入ったとしてもわずかな量ですが、クリームや液状のものは、乾燥すると粉になります。
それらが抵抗を生み、止まりや誤差の原因となります。
金メッキ自体は非常に厚み自体が薄く、何度もごしごしと磨く・擦ってしまうと、メッキ自体が剥がれて無くなります。
素材そのものを磨くのではなく、布に含まれる「成分」を表面に塗ることで、ツヤと照りを出します。
サンドイッチに例えると、下地の金属が具材の部分で、パンのように表と裏に薄い金の板が張り付けられているような構造で、しっかりと金の部分自体にも厚みがあります。
メッキと金張りの違いをイメージしていただくと、金属の表面にマジックペンで金色に塗ったような技法がメッキ、かなりぶ厚いアルミフォイルを表に貼ったのが金張りというイメージです。
薄い金の板として、つかむことができ、厚みを計測することができるのが金張り。
厚みという点では、それぞれの質にもよりますが、厚みにして100倍ほどの大きな違いがあります。
ただ金張りも年月や使用によって薄くなっている場合があり、下地が出てしまっていることもありますので、メッキ同様に、軽めの磨きに留めていただくことをお勧めします。
銀無垢の場合は、一般的にかなり厚みがあるため、磨いて減りを感じるような厚みではありません。
軽く押すだけで、ペコペコと凹んだり戻ったりする厚み程度しかないものもありますので、あまり強く磨かないほうが無難です。
しっかりとした厚みのある金であれば、ごしごしと磨いても、大きな影響はありません。
例えを挙げると、厚みのある金であれば、上記でご紹介したジュエリー磨きの布で、1000回ほど強く擦っても、0.01グラム単位の変動もありません。
今まで新しい時計・デジタル時計しか使ったことがない、時計にあまり詳しくない方なら、ご存じなくても当然です。
新しい時計をお使いの場合であれば、機械式時計をお持ちの方でも、しっかりと調べられている方か、長く使い込まれてメンテナンスを受けられた方だとご存じだと思います。
車なら車検のようなものです。
アンティーク時計の場合は特に、このサービスを「定期的」に受けていただくことが重要になります。
また長期間動いていることで、油自体や油とホコリなどが混ざって小さなゴミとなり、磁気を受けていくことでも、時計の動きは弱まっていきます。
それらを解消させるのが、大がかりなメンテナンスを行う「オーバーホール」です。
人に例えると健康診断のように、進行中の病気を食い止めたり、起りそうな病気を予防できるという側面を持っています。
油を差すにしても、全て資格と技術のある職人が行う領域になります。
それぞれの部品が極端に小さく細いため、ごくわずかに差す箇所や油を貯める箇所、柔らかい油や固い油・グリースなどの使い分けを行い、油が抵抗となって部品の動作を阻害しないように作業を行うことが必要です。
不要な部分に油が付いてしまえば、それが重りとなって精度を大きく狂わせてしまいます。
ご自身で行っていただいて、良い結果になることは絶対にありません。
ホームページなどで、自分で注油する方法などを紹介しているものもありますが、時計の内側はご自身でお手入れしていただける部分は、残念ながらありません。
この点は、絶対に忘れないでください。
しかしながら、ネジや針などの部品を締めたり緩めたりを繰り返すということは、厳密にいえば、金属疲労や部品の摩耗もわずかながらでも伴います。
程よい期間で受けていただくのが、時計のためになります。
機嫌よく動いてくれている時計で、問題も無いようであれば、3~5年に一度をめどに受けていただくことをお勧めしています。