華のある女性のための懐中時計
時計の作りは、時代を遡るごとに人の手による温もりある作りや、再現できない美術性を帯びていきます。
1900年代の形を想像することができるアンティークから、1800年代に入ると、そこにはまるで違った世界が広がります。
この時計は、そんな時代の職人技と美術性を伝える1点。
これが懐中時計なのかと、驚かされてしまうような繊細な色合いが特徴で、表面そして裏面にも、華やかな赤いエナメル装飾が施されています。
またこの時代ならではの顔を持つ時計でもあり、陶製の少し深い色合いの文字盤に、5分ごとの金のインデックス、そして繊細で豪華な針が添えられた、アンティークらしい雰囲気のある作りのもの。
そして特筆すべきは、時計の裏面に見えるエナメル装飾のデザインの美しさ。
大胆な大きな一輪の花と、その横に伸びる金の草。
エナメル装飾の下側にも、小さな彫りが施されているため、エナメルに光が通ると、その柄が透けて浮かび上がってきます。
またこの時計に合わせられたリボン状のブローチも、とても味のある作りのもの。
デザインや作りなどから、時計に合わせられて作られたことは間違いのないものでしょう。
2つを合わせて飾ると、本当に綺麗なエナメルのブローチに。
時計とブローチを繋ぐクリップは、年代の古い昔のもので、時計とブローチを取り外す必要がなければ、本来ならシルバーなどの輪で繋いでしまっても良さそうなもの。
それでもそういった作りをせずに、時計の取り外しができる作りになっているのは、ブローチ単体として使われるというよりも、時計が非常に高価な時代のことですので、時計単体で、チェーンなどにも合わせて使われていた名残でしょう。
素材や作りから、どなたにでもお勧めできるものではありません。
ただその写真から伝わる陰影や透明感から、ぐっと引き込まれる魅力を感じていただけるはず。
一般的な懐中時計とは大きく一線を画し、その時代を深く感じることができる懐中時計だと言えます。
店主のワンポイントと評価
総合評価
アンティーク時計と呼ぶに相応しい、特別な作りを持ったもの。
工業的ではない、その当時に伝わる職人技や技術が詰め込まれたもので、美術品のような特別さ・手仕事の温もりを感じていただけるものだと思います。
当時の懐中時計と言えば、比較的シンプルで重厚なものが多い中、女性のための時計として作り出されたもので、非常に趣のある作りになっています。
時計としてはもちろん女性用のものですが、男性がご覧になられても、その作りに惹かれてしまうものでしょう。
机の上の癒しの1品として、飾って眺めていただくなど、美術品として身に着けないという選択肢があっても面白いのではないかと思います。
状態
エナメル装飾自体が非常に繊細な作りであるため、機械でピカピカに磨くような手を入れることができないものです。
目立つ部分では、表側の赤いエナメル装飾の、12時と6時のふち辺りに小さな欠けがあり、裏面の3枚の金の葉のうち、1枚の金の部分が取れていますが、素材や長い年月を考えていただくと、本当に気にしていただくほどのものではない、ごくわずかな部分です。
希少性
繊細な素材であるため、割れの無い状態の良いものほど珍しく、この時計のようにほとんど割れが無いような良いものには、なかなか出会えません。
ブローチとのセットという点で、組み合わせとしても貴重なものです。
贈り物
作りやデザイン的には、贈り物としても非常にお勧めしたい1点です。
ただ年代的に1800年代の作りのもので、懐中時計全盛期のものよりも、シリンダー式という一世代古い作りになります。
その点では、古いものにご理解のある方にのみお勧めします。
備考
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