紳士のこだわりを感じる傑作
懐中時計が全盛であった1900年頃のその当時の、懐中時計を持つことの価値と、身に着けることへのこだわり。
そしてそれを着こなす紳士のあり様が伝わってくるような、特別な銀の懐中時計チェーンです。
総じての姿や雰囲気が美しいことはもちろん、特に中央の飾りの作りには目を見張るものがあり、その作りの良さとデザイン性の素晴らしさは、古くから受け継がれる様式が詰め込まれているかのよう。
現代の宝石やジュエリーにはない、まるでアンティークの豪華なティアラやネックレスにあしらわれている装飾を、ぎゅっと詰め込んで形として表現したものであるかのようです。
チェーンだけを飾って楽しみたいような味のあるもので、この時代ならではの作りやデザインには、この時代の特別なものにだけ見られる大きな魅力が詰まっています。
中央の飾りの美しさや特別さは言及するに及ばないほどで、他の装飾部分とは比べものにならないほど、この部分にとても注力されたことが伺われる部分で、凛として際立った雰囲気があります。
またそれに繋がるチェーンの中央部分は、5本の細いチェーンで構成され、飾りを中央で固定するために、他の4本のチェーンが飾りの中を通されているのに対し、中央のチェーン1本だけが、飾りの両側の突起に合わせるように、留めの輪が配置されているのも大きな特徴。
また中央の飾りと対になる作りを持つボタンホールに通すバーも、特殊なデザインが施されたもので、この部分もこのチェーンの見どころ。
着けた時に表側に表れる、留め具として見えるところにもしっかりと装飾が施してあるのも、こだわりが強く感じられるところです。
チェーンの両端にも繊細な装飾が施されていて、そこから伸びる短い2本のチェーンにも綺麗な装飾が施されています。
このチェーンを合わせていただくなら、銀無垢の懐中時計でも、できればサイズ的には大型のもの。
中型のものでも合わないわけではありませんが、中央の飾りに6ミリ弱としっかりとした厚みがあるため、中型程度であれば合わせる時計によっては、この飾りの印象に負けてしまいます。
大型で銀色であれば時計の作りは問わずに合わせていただきやすいものですが、中型であればチェーンに負けないほどの個性や装飾、比較的厚みのあるものが似合います。
店主のワンポイントと評価
総合評価
作りやデザインとしては本当に素晴らしいもので、チェーンを飾って楽しみたくなるという意味では、それ自体に価値のあるものといえます。
特に中央の飾りの装飾は抜きんでた作りで、丸十字という形容の仕方が良いのでしょうか、丸い形を用いたものではありますが、四方に装飾として出ている部分があり、十字のようなデザインに見えるようになっています。この部分だけをご覧いただいても感動していただけるものだと思います。
この手のチェーンであれば、胸前に提げた時に、左右のどちらかのポケットに合わせる形になっていて、中央の5本のチェーンの長さをそれぞれ少し変えておくのですが、このチェーンはすべての長さが同じになっていて、中央から左右どちらのポケットに流して着けていただいても同じという利点があります。
またチェーン両側にある、丸い玉の飾りの付いた短いチェーンですが、この部分がしっかりと長めであるため、使い方に柔軟性があるのも利点です。
よく見なければわからない点なのですが、ボタンホールに通すバーの中央からみて、左右にある小さな玉のサイズがやや違う。
丸い玉のような飾りの線上に、小さな点が配されている部分では、点の作りに失敗して点が継続していない、塊になっている箇所が少し見られます。
どちらもごくわずかなことですが、作り直しの利く部分を直していないのは、海外の職人らしいな、依頼者も直しを頼めなかった事情があるのだろうなと考えられて、微笑ましく思える部分です。
状態
特記事項はありません。
希少性
同じものが無いと考えられる、特殊な作りの物です。
贈り物
いかにもアンティークという作りであり、その中でも他とは大きく違う特色を見せる素晴らしいものです。
贈り物としても、真似のできない1点ものであり年代物。
非常にお勧めできる1点です。
備考
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H.R.様 【埼玉県】 –
繊細な造りとその美しさに感銘を受けました。今はこのチェーンを手にしながら、いにしえのベル・エポックに憧憬の思いを馳せております。